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不祥事が発生した場合のマスコミ対応
企業内で不祥事が発生したとき、特にそれが犯罪に関わるような場合、新聞、テレビ、インターネット、雑誌等で報道がなされることがあります。
その際、企業にも取材がなされ、時には、記者会見を実施する必要が生じるかもしれません。
しかし、不祥事発生、特に刑事事件に関する問題は、報道のされ方によっては、企業の対応の仕方に思わぬ批判を招くこともあり、マスコミ対応は慎重になされなければなりません。
不祥事対応においては、特に初動対応が物事を大きく左右します。
そこで、そもそも不祥事が生じた場合にどうするのか、について予め事前準備をしておくことが重要です。
ここでは、企業で不祥事が発生した場合のマスコミ対応についてお話しします。
初動対応の重要性
不祥事が外部に発覚した直後に、企業の役員(経営陣)が現場の知る不祥事の内容をきちんと把握できていなかった場合、ときとして、役員がメディアに対し、事実と異なる情報発信をしてしまうことがあります。
このような事態になるのを回避するため、企業としては、不祥事の情報に接した際には、早期に事実関係の調査を行い、事実を正確に把握する必要があります。
企業の役員としては、情報の収集に努めるとともに、対応する者によって異なる発表をする事態を防止するため、メディアに対応する窓口を決め、対応の責任者を決めて、メディア対応をその責任者だけに行わせる必要があります。
記者会見を行う場合にも、何よりも大切なのは、きちんとした事実関係の調査を行った上で、会見に臨むことであり、事実と異なる発表をしたり、何を聞かれても、「調査中です」「不明です」といった答えばかりでは、せっかくの記者会見も逆効果となって、かえって企業の社会的信用を失わせることになりかねません。
このように、企業としては、まずもって事実を正確に把握することに努め、その上で、再発防止のためにどのような措置をとるのかなどを構築して、その内容を公にしていくことが望ましいといえます。
以上のように、不祥事が発覚した直後の初動対応は、企業の社会的信用を維持するために極めて重要です。
不正調査について
実際に不祥事が発生した場合には、早急にその不祥事に関する事実関係を詳細に調査する必要があります。
そして、明らかになった事実関係を基礎として、不祥事が起きた原因を分析し、再発防止策を策定する必要があります。
こうした事実関係の調査などについては、基本的には企業内部で行います。
しかし、不祥事によって失われる企業の社会的信用が大きい事案等の場合、より中立的・客観的な立場にある外部の弁護士等に調査を依頼し、また、企業とは独立した第三者委員会を設置して調査を依頼することも検討する必要があります。
さらに、場合によっては、不正を行った関係者に対し、懲戒処分などの処分を行い、従業員が顧客から預かった金を横領したなどそれが犯罪に関わるような場合、企業は被害者となるわけですから、捜査機関に対して告訴・告発を行うことも検討する必要があります。
不祥事発生の場合の体制を準備しておくことの重要性
不祥事が発生した場合、何らの準備もなく既に述べたような対応をとることは不可能です。
そのため、実際に不祥事が発生した場合に備えて、そのような事態が発覚した場合に情報収集に当たる担当者やメディア対応の責任者を予め決めておくことが重要です。
また、SNSの普及等により、企業内部で起きた不祥事でも企業外部に漏れ、その結果として、企業の信用が毀損されるリスクは格段に高まっており、事件の直接の被害者だけでなく、世間一般に対応する必要性も、今後ますます増加していくと考えられます。
そこで、事案によっては、企業の外に情報が洩れてからメディアに情報発信するのではなく、後日、メディア等から「隠蔽」と非難されるのを防止するため、企業の側から積極的に情報発信する方が望ましい場合もあります。
過去の経験も踏まえ、どのような場合に企業の側から積極的に情報発信していくかについても取り決めをしておく必要もあるでしょう。
企業としては、平素から、不祥事発生に備えて、あらかじめマニュアルを整備し、十分な事前準備を行っておく必要があります。
総括
企業に関連する不祥事、とりわけそれが犯罪に関わるような場合には、捜査機関に対する対応など事件そのものについての対応と同等、もしくはそれ以上にマスコミ対応が必要となります。
マスコミ対応を誤ると企業の生死も決しかねません。
不祥事が起きた場合の不正調査を実施している際、関係者の間で相互に話が食い違うこともあり、その場合には、客観的な証拠や中立的な第三者の供述等に基づいて、真実が何かを確定する必要があります。
このような客観的な証拠の分析や第三者からのヒアリングなどによって適正な事実認定を行うことは、事実関係の調査について経験豊富な弁護士が行うことが適任であり、さらに、捜査機関に対して告訴・告発を行うか検討する場合についても、企業犯罪については事案が複雑である場合が多いので、告訴状や告発状は、通常、弁護士に依頼して作成することになります。