マネーロンダリングとは、犯罪や違法な行為によって得た資金を、出所や所有者が分からないように仮装・隠匿し、捜査機関による収益の発見や摘発から逃れようとする行為を指します。収益の違法な起源を偽装することから、資金洗浄とも呼ばれます。
マネーロンダリングにあたっては、架空若しくは他人名義の口座を利用して送金を行う、売買や借り入れを装って契約書や関係書面を作成するといった手段が用いられます。
出所等が分からなくなった資金は、さらなる犯罪に悪用されます。組織犯罪に用いられるのがその最たるもので、マネーロンダリングは国内のみならず世界的に脅威となります。
そのため、各種法律がマネーロンダリング対策を目的に、罰則を設けています。
企業としては、犯罪であるマネーロンダリングを自ら行わないのは当然として、自覚のないままマネーロンダリングに加担しないことが重要になります。
各種法律に抵触してしまえば、役員が逮捕・勾留されてしまい事業の継続が困難になる、大々的に事件報道がされてしまう、起訴されて刑事処罰を受けてしまうといった、看過できない事態に陥ります。
ここではマネーロンダリング対策のために罰則を設けている法律の一例を紹介します。
行おうとしている企業活動がマネーロンダリングに該当しないか不安な場合は、企業犯罪や不祥事に詳しい弁護士に相談し、適切な助言を受けることが肝要です。
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銀行法違反
不透明な金銭の流れがあっても、正規の金融機関を通している場合は、捜査機関も跡をたどりやすいといえます。
これに対して、無許可で銀行業を営んでいる場合は、捜査も難航してしまいます。海外への不正送金を行う、いわゆる地下銀行の存在などは大きな問題となっています。
銀行法では4条1項において「銀行業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、営むことができない。」定めており、同項に違反して無免許で銀行業を営んだ場合は「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」とされています(銀行法61条1号)。
貸金業法違反
金銭の貸し借りについても、銀行業同様、正規の業者でなければ金銭の流れが不透明になり、マネーロンダリングに悪用される可能性があります。
そのため、貸金業法では金銭の流れを追うにあたって支障になる、無登録営業や名義貸しについて罰則を定めて規制しています。無登録営業(貸金業法11条1項)をした場合は、10年以下の懲役若しくは3000万円以下の罰金、又はこれらが併科されます(同法47条1号)。名義貸し(同法12条)についても法定刑は同様です(同法47条3号)。
企業にとっていわゆる闇金業者は、高金利での貸し付けのみならず、マネーロンダリングに関わるおそれがある点でも注意が必要です。
保険業法違反
保険の募集も多額の金銭の流動を伴うため、許可なく行われてしまえば、銀行業や貸金業同様、不透明な金銭の流れが追えなくなり、マネーロンダリングに悪用されるおそれがあります。
保険業を行うにあたっても、内閣総理大臣による免許が必要とされ(保険業法3条1項)、名義貸しが禁止されています(同法7条の2)。
無免許での保険営業や名義貸しについては、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」と罰則が設けられています(同法315条1号、同条2号)。
犯罪収益移転防止法
これまで解説したように、無免許ないし無登録の業者が介在してしまうと、不透明な金銭の流れを追跡し摘発することが難しくなります。他方、正規の金融機関であっても、開設された口座が第三者によって利用されてしまうと、同様にマネーロンダリングに悪用されるおそれがあります。
このような弊害を防ぐため、犯罪による収益の移転防止に関する法律、いわゆる犯罪収益移転防止法が、開設済みの銀行口座等を第三者に利用させることを禁止しています。
具体的には、口座を利用するために必要な預金通帳やキャッシュカード等を譲り受ける行為(同法28条1項)、交付・提供する行為(同法28条2項)に対して、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、又はこれらの併科が罰則として定められています。
闇金業者から融資の条件として使用していない口座の通帳やキャッシュカードを交付することを求められ、犯罪収益移転防止法に違反してしまうのがその典型です。
資金繰りのためにこのような話に乗ってしまうと、逮捕や刑事処罰のリスクを負うことになってしまうため、企業としては細心の注意が必要です。なお、第三者に利用させることを伏せて新たに口座を開設した場合は、より罰則の重い詐欺罪(刑法246条1項)で処罰されるおそれがあります。