風評被害、虚偽の口コミ

口コミについて

口コミは、商品やサービスの提供を受けて利用した消費者が、ネットワーク上のサイトや掲示板等を利用して、その商品等の感想などの情報を書き込んで発信するものです。

一般的に、企業が発信する広告よりも、消費者側の実際に利用した感想などの情報は、セールス効果が高く、信頼されやすい情報とされます。

消費者側の自主的な情報共有であり、本来莫大なコストがかかる広告費を必要としない最も低コストでできる広告手法ということもできます。

口コミのデメリット

このように口コミには多くのメリットがある反面、拡散しやすく信頼されやすい情報という特性が仇となることもあります。

特に、企業や企業の役員・従業員が犯罪や違法な行為を行ったという疑いが生じれば、当該企業に関して様々な情報が飛び交うことになります。

その際に、全く根拠のない噂が流れたり、この騒ぎに便乗して企業側の商品やサービスの価値を意図的に下げようとするなどの悪意をもった嘘の情報を書き込んだ口コミがしばしば見られます。

このような悪質な口コミは、企業側が被害者となる業務妨害罪などの犯罪となることがあります。

犯罪となる可能性のある悪質な口コミとは

例えば、「飲食店の料理の中にもゴキブリが入っていた。」などの嘘の情報をネットワーク上の掲示板などに書き込んで発信した場合、業務妨害罪や信用棄損罪に該当することがあります。

これらの書き込みは、その飲食店で提供される料理などの品質が悪いとのイメージを持たせたり、商品管理に関する社会的評価を低下させたりしているからです。

また、ネットワーク上で、「○○店のサービスは○○していて最悪だ。」などと具体的な事実を示して名誉を傷つけた場合は、名誉棄損罪(刑法230条)となることがありますし、具体的な事実を示さなくても「○○会社は悪徳業者だ。」などと書き込んだ場合は、侮辱罪(刑法231条)となる場合があります。

さらにエスカレートして、「こんな悪徳会社には罰が必要だ、会社も従業員もまるごと燃やしてやる。」などと書き込めば、商品やサービスに対する虚偽の口コミを超えて、脅迫罪(刑法222条)となります。

いずれにしても、こうした悪質な口コミが消費者などに拡散されると、ただでさえイメージが悪化しているところに加えて、商品やサービスの売り上げが下がり、特に主力商品の売り上げが激減すると事業自体が存続の危機に瀕することさえありえます。

悪質な口コミによる企業のダメージ

悪質な虚偽の口コミにより企業イメージが悪くなると、そこで勤務している従業員が精神的なダメージを受けるなどすることもあり、メンタル面で体調不良による業績の悪化、さらには離職率が高くなるなどして人手不足に陥ったり、新規の採用が困難になったりすることも考えられます。

また、企業の与信にも大きな影響を与えることがあります。問題となった不祥事以外でも、商品やサービスについての悪質な口コミが出回ることで、金融機関や取引先からの信用をなくし、最悪の場合は融資を断られたり、取引が中止になったりするおそれもあります。

早い段階で法的措置を講じることが重要

こうした悪質な口コミが重大な風評被害につながるまえに、必要な対応をとらなければなりません。

そのためには、こうした事案について多くの経験をもち適切に対応できる弁護士に相談し、できるだけ早い段階で法的措置を講じることがとても重要です。

具体的な法的措置としては、サイト運営会社に対する悪質な口コミの削除要求、プロバイダーに対する口コミを書き込んだ者の個人情報の開示請求、これにより特定した加害者に対する民事訴訟の提起、刑事告発によって警察捜査を開始させて事案を解明させるなどが考えられるところです。

もっとも、訴えを提起したり捜査が始まったからと言って安心はできません。名誉棄損に当たる口コミであっても、公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図ることにあり、真実であることの証明があったか、真実であると信じるにつき相当の理由があれば、民事責任も刑事責任も負わせることができません。

企業の不祥事である以上、公共の利害に関する事実ではないとは言えないでしょうし、「目的が専ら公益を図ることにあり」といっても、事実を示した際に公益しか考えていなければ認められない、というわけではありません。

企業としては、当該事実は真実ではないし、真実と信じるに足る理由もなかったことを示す必要があります。訴訟の過程で、より自社の信用を落としかねない事実が衆目にさらされることになるかもしれません。

一方で、問題を起こした企業が専ら被害者かのようにふるまったり、元来の問題がさもなかったかのようにふるまえば、人々は不信感を抱き、ますますこのような口コミを信用することになるでしょう。

自社に対する不法行為に対し毅然と対応する一方で、自社の問題点を徹底的に調査し公表することを並行して行うことが重要となります。

このように、企業に関する風評被害や口コミは様々な問題があり、いずれの問題についてもこうした事案に精通した弁護士による支援が必要です。

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