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⑴ 発覚の端緒
企業内の犯罪や、不祥事については、多くの場合には秘密裡で行われ、自然と明るみに出るということは多くありません。
そのため、発覚したきっかけ(発覚の端緒と呼びます)は、内部若しくは外部の様々な機関による調査に基づくものとなります。
⑵ 内部通報
企業内で不正が行われていた場合、実際に不正を行ったり、見聞きしたりした(元)従業員から内部通報が行われる場合があります。
仮にこの従業員が外部の機関に通報した場合には、次項以降に述べるような機関による調査が開始されることになりますが、外部ではなく同じ会社の別の部署・部門に対して通報がなされる場合があります。
このような内部からの通報があった場合、通報を受けた部署としてはどのような対応をするべきでしょうか。
もし、内部通報があったにもかかわらず、これに対して不誠実な対応を行ったとすれば、仮にその問題が後に外に出たときにはさらに大きな問題となるばかりではなく、故意・過失といった法律上の要件の面でも損害賠償範囲や刑事責任が拡大する可能性があります。
そのため、内部通報があった場合にも、内部調査、場合によっては外部の専門家を入れる等して調査を行う必要があります。
ただし、この調査の規模については、通報があった事実の大きさによって異なると思われます。
なお、「公益通報者保護法」という法律があり、公益通報を行った者の解雇の無効などが定められていますが、企業の従業員が企業の内部に向けて通報を行った場合も「公益通報」に含まれますので、この点には注意が必要です。
⑶ 公の機関による調査
内部から外の機関への通報があった場合や、調査権限を持つ機関が調査を開始した場合に、企業犯罪や不祥事が発覚する場合があります。
たとえば、国税庁、税務署は、税金の徴収等を行うため、質問検査権を保有しており、帳簿等の提出や取引先への調査(反面調査)等を行うことができます。
これらの調査に対しては、応じなかった場合に制裁が課されるような仕組みになっているほか、最終的には強制的な権限も保有していることもあり、回避することが困難なものが多数あります。
これ以外にも、金融庁は金融商品取引法に基づく権限を行使し、企業の会計帳簿の検査を行うことができます。
このような税務署、金融庁等の調査は業種を問わずなされる可能性があるものですが、それ以外にも現在の企業は多数の許認可を行政から受けたうえで企業活動を行っています。
監督官庁は、許認可を与えると同時に、事業に対しての監督権限を保有していることが通常です。そして、この監督権限に基づき、報告の要求や資料の提出など、さまざまな調査を行うことができます。
このレベルの調査であれば、市役所から国の省庁に至るまで、様々な行政機関が重複的に一つの企業を調査していることになりますので、企業の営業活動の中で行政の管理が及ばない場所はほとんどないとも言えるような状態となってしまいます。
もしこの調査の過程で問題が発覚した場合には、問題の許認可が取り消されたり、効力を制限されたりするなどの不利益があることは十分想定されますので、これだけでも会社の営業にとっては大きな不利益となります。
そしてそれだけでなく、一定の場合には問題を認識した監督官庁は、警察・検察といった捜査機関に対して告発を行うことがあります(刑事訴訟法上、事件を認識した官吏は告発をすることになっています)。
多くの場合には告発まで行うかどうかは事案次第なのですが、中には金融商品取引法第226条のように、一定の場合には証券取引等監視委員会に告発を義務付けているようなケースも存在します。
そして、告発がなされた場合には、告発をしたこと自体が行政機関によって報告され、マスコミに報道される可能性があるほか、刑事事件へと発展し、会社関係者が処罰を受ける可能性もあります。
ここまで問題が発展してしまった場合は、代表者や社内の関係者も捜査の対象となり、その捜査の事実が報道されるような事態も生じます。
その上、刑事裁判が開かれることになれば、その法廷が公開されることによって企業内部で行われていた不祥事等が明らかになる可能性があります。そのため、できる限り早期に対応する必要があります。