業務上過失致死傷罪

1 業務上過失致死傷罪について

業務上過失致死傷罪については刑法211条1項前段に定めがあります。

刑法211条1項前段

業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金に処する。

業務上過失致死傷罪における「業務」とは人の生命身体に危険が生じる行為を反復・継続して行うことを指します。反復・継続して行う予定の行為であれば、最初の1回目の行為で他の人を死傷させてしまった場合にも業務上過失致死傷罪が成立することになります。

業務上過失致傷罪とは、そのような反復継続する行為を行う際に当然に払わなければならない注意を怠った結果、人を死傷させるという結果を発生させた場合に成立します。

代表的なケースとしてバス会社が過剰労働をさせた結果として交通事故が発生した場合や、工事現場で必要な事故防止策をとらずに事故が発生し作業員が負傷してしまった場合などに成立します

2 会社が負う責任について

先ほど挙げた具体例で業務上過失致死傷罪により刑事罰を受けるのは、バス会社の代表や責任者、工事現場の責任者等であり、会社自体が業務上過失致死傷罪で刑事罰を受けるわけではありません。

しかしながら、先述した事故が発生した場合に、会社も刑事罰を受ける可能性があります。刑罰受ける可能性のあるのは、労働安全衛生法違反が成立する場合です。労働安全衛生法では第20条から第25条の2までに事業者に対して、労働者の危険又は健康障害を防止するための措置を講じるような義務を定めています。

そしてこの措置を講じていなかったと認められた場合には、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金を科すと定められており(労働安全衛生法119条)、刑罰を規定した労働安全衛生法119条には両罰規定の定めがあるので(労働安全衛生法122条)、法人も罰金刑を科される可能性があります。

また会社が負う可能性のある責任としては刑事罰だけではなく、民事上の賠償責任があります。

会社は業務を行うにあたって労働契約法上の安全配慮義務という義務が課されています(労働契約法5条)。安全配慮義務とは労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする義務をいいます。

会社内で事故が発生した場合に、この義務への違反が認められれば会社が安全配慮義務の不履行に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。

仮に被害者の方がなくなってしまった場合には億単位の賠償が命じられるケースもあります。他にも会社の従業員の過失で被害者の方を負傷させてしまった場合、死亡させてしまった場合に使用者責任(民法715条)に基づく損害賠償の支払い義務を負う場合もあります。

3 業務上過失致死傷事件が発生した場合の会社側の対応

(1)被害者の方、被害者遺族の方への賠償対応

先ほど説明したように、会社自体が業務上過失致死傷事件で刑事罰を受ける場合は限定的ですが損害賠償などの民事上の責任を追及される可能性があります。

会社の安全配慮義務違反や従業員の不注意などで事故が起こった場合には、まずは迅速かつ誠意をもって被害者の方に対応することが重要になります。

具体的には被害者の方や被害者遺族の方に対し謝罪と賠償を申し出て示談での解決を打診することも考えられます。

当然ながら被害者の方や被害者のご家族の方は加害者や会社側に厳しい被害感情をお持ちでしょうから、弁護士を間に入れて交渉することが望ましいといえます。

(2)再発防止策の策定

会社の業務に関して重大事故が発生した場合には社会的イメージへの影響も深刻になる場合があります。

その場合しっかりと原因の究明や再発防止策をとることが重要になります。

その際に第三者からのアドバイスを受けることは対外的なイメージの回復という点でも重要になります。弁護士は多くの法的紛争を扱ってきており、業務上過失致死傷事件が発生した場合の、再犯防止策の策定を行う場合にまさに適任であるといえます。

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