企業は利潤の追求を目的としているため、販路や顧客の拡大、商品やサービスの向上、コストカット等、様々な創意工夫を日常的に行っています。
もっとも、消費者あっての企業である以上、あらゆる企業活動が無制約に認められるわけではありません。たとえ企業側に利益があるとしても、消費者の利益を不当に害する行為は、法律によって規制されています。
その中でも、市場における公正・自由な競争を阻害する行為は、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律、いわゆる独占禁止法によって規制されています。
独占禁止法は公正・自由な競争を担保するために、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法を違反行為として禁止するとともに、企業結合の規制についても定めています。
各種違反行為に対しては、懲役刑や罰金刑を伴う刑事罰、高額を国庫に納めさせる課徴金納付命令、違反行為の是正を求める排除措置命令が行われ、強制力が担保されています。
自由競争を歪めて一時的に利益を上げることができたとしても、これらの措置を受けることで、企業は深刻な打撃を被ることになります。そのため、独占禁止法に抵触することがないよう、企業としての活動に問題がないかのチェック体制を設けることが欠かせません。
活動内容に不安がある場合は、企業犯罪・不祥事に詳しい弁護士に速やかに相談しましょう。
このページの目次
私的独占の禁止
私的独占(独占禁止法2条5項)とは、市場において支配的な地位にある企業が単独で又は他の企業と連携し、競合他社を市場から締め出す、新規参入者を妨害するといった行為を指します。
取引先に資金やリベートの提供を約束し、競合他社の製品を取り扱わないように働きかけるといったケースが想定されます。
不当な取引制限
不当な取引制限(独占禁止法2条6項)とは、複数の企業が示し合わせて競争を制限する合意をする行為を指します。
本来なら各企業が独自に決定する商品の価格や生産数量を企業間で取り決めるカルテル、公共事業などにおいて落札者や落札額を事前に企業間で相談・決定してしまう入札談合などが不当な取引制限に該当します。
事業者団体の規制
独占禁止法は事業者のみならず、2以上の事業者で構成される社団や財団、組合等の事業者団体(独占禁止法2条2項)も規制の対象としています。
禁止される事業者団体の行為は独占禁止法8条に列挙されており、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること(同条1号)などが規制されます。
なお、役員の兼任や合併などの企業結合によって、一定の取引分野における競争を実質的に制限することも禁止されています。
不公正な取引方法の禁止
不公正な取引方法は、独占禁止法2条9項及び公正取引委員会の告示によって定められています。
具体的には、各企業が共同して競合他社との取引を拒絶し、若しくは供給する商品の数量を制限する(独占禁止法2条9項1号イ)、卸価格や出荷数量を調整することで、小売業者等にメーカー指定の販売価格を強制させる(独占禁止法2条9項4号イ)といった行為が挙げられます。
課徴金制度
違反行為に対するペナルティとして、独占禁止法は刑事罰とは別に課徴金制度を設けています。課徴金とは、公正取引委員会が違反事業者に課す、金銭的不利益のことを指します。課徴金は国庫に納付されます。
課徴金の対象となる違反行為は、私的独占、不当な取引制限、そして不公正な取引方法のうちの一部(共同取引拒絶や不当廉売など)になります。
課徴金の額は、違反行為に係る期間中の対象商品又は役務の売上額又は購入額に、事業者の業種及び規模に応じた算定率を掛けて計算します。違反の期間や規模にもよりますが、課徴金は場合によって数十億円にまでのぼることもあります。
なお、カルテルや入札談合といった違反行為は証拠が残りにくく立証が難しいため、自主的に違反内容を公正取引委員会に報告した事業者には、課徴金が免除又は減額される課徴金減免制度が存在します。事案の解明及び自由で公正な競争の早期回復がその目的とされています。