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⑴ 外部調査・第三者委員会が必要な理由
企業内で問題が発生し、そのことが公表されるなどした場合には、上場企業においては株価の下落など、明白に企業価値が毀損されることになります。
この下落した企業価値を回復するためには、不祥事が発生した原因を究明し、再発防策を策定する必要があります。
このとき、企業内部の者による調査に留まると、株主や市場関係者からはその公平性中立性が疑われることになり、十分なものと評価されないおそれがあります。
そのため、公平性中立性を明確にするためにも、企業の外部の人材による調査が不可欠となります。
⑵ 第三者委員会とは
第三者委員会を設置するか否かは各企業の判断ですので、第三者委員会という言葉の定義はありません。
ただ、日本弁護士連合会が策定した「第三者委員会ガイドライン」(以下「ガイドライン」とします)では、第三者委員会の定義として
「企業や組織(以下、「企業等」という)において、犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等(以下、「不祥事」という)が発生した場合及び発生が疑われる場合において、企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会」
としています。
どこまでの行為を第三者委員会が行うかは事案ごとに判断されるべきものだと思われますが、少なくとも「企業等から独立した委員のみをもって構成」しているという点は、最低限必要ではないかと思われます。
⑶ 第三者委員会が企業に求めるもの
ガイドラインでは、第三者委員会に選任された弁護士が企業に求めるものとして以下のものを挙げています(同ガイドライン4頁)。
- 企業等が、第三者委員会に対して、企業等が所有するあらゆる資料、情報、社員へのアクセスを保障すること。
- 企業等が、従業員等に対して、第三者委員会による調査に対する優先的な協力を業務として命令すること。
- 企業等は、第三者委員会の求めがある場合には、第三者委員会の調査を補助するために適切な人数の従業員等による事務局を設置すること。
当該事務局は第三者委員会に直属するものとし、事務局担当者と企業等の間で、厳格な情報隔壁を設けること。
第三者委員会が独立した判断を行うためには、資料の調査等を行い、従業員からの聞き取り等を行う必要があります。
また、社内の事務を知る者の協力が必要となる場合がありますので、従業員が事務局として稼働する場合もあります。
⑷ 第三者委員会の職務
ガイドラインでは以下の行為が第三者委員会の職務とされています(同ガイドライン1、2頁)。
1.不祥事に関連する事実の調査、認定、評価
第三者委員会は、企業等において、不祥事が発生した場合において、調査を実施し、事実認定を行い、これを評価して原因を分析する。
① 調査対象とする事実(調査スコープ)
第三者委員会の調査対象は、第一次的には不祥事を構成する事実関係であるが、それに止まらず、不祥事の経緯、動機、背景及び類似案件の存否、さらに当該不祥事を生じさせた内部統制、コンプライアンス、ガバナンス上の問題点、企業風土等にも及ぶ。
② 事実認定
調査に基づく事実認定の権限は第三者委員会のみに属する。
第三者委員会は、証拠に基づいた客観的な事実認定を行う。
③ 事実の評価、原因分析
第三者委員会は、認定された事実の評価を行い、不祥事の原因を分析する。
事実の評価と原因分析は、法的責任の観点に限定されず、自主規制機関の規則やガイドライン、企業の社会的責任(CSR)、企業倫理等の観点から行われる。
2.説明責任
第三者委員会は、不祥事を起こした企業等が、企業の社会的責任(CSR)の観点から、ステークホルダーに対する説明責任を果たす目的で設置する委員会である。
3.提言
第三者委員会は、調査結果に基づいて、再発防止策等の提言を行う。
まとめ
第三者委員会は、あくまでも毀損した企業の信頼回復を行うために設置されることを主とするものです。
ですので、関係者の法的責任を問うというよりかは、原因の究明及び再発防止策の策定等の点に主眼を置き、これを関係者に公表することを主とする方がよいと考えられます。