【事例】
Aさんは、山口県下関市で飲食業を営む会社であるⅩ社の従業員です。
Ⅹ社では、来年度からインターネットでの通販を利用して自社のレトルト食品を日本全国に販売することを目指しています。
しかし、Ⅹ社は、これまで自社店舗での販売と地元の小売店への販売しかしていませんでした。
そこで、このような事業拡大にともなって生じる課題に対応するために、Ⅹ社では法務部門を新設することになりました。
そして、Aさんが新設される法務部門の責任者となりました。
X社の法務部門では、事業拡大の際に様々な業者と取り交す契約書のチェックも業務となっています。
しかし、Aさんは弁護士資格を有しているわけではありませんし、他の社員も弁護士資格は有していません。
また、X社にはこれまで顧問弁護士もいませんでした。
そこで、Aさんは、今後予想される契約書チェック業務に対応するために、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
このページの目次
1 はじめに
前回までの記事では、契約書に関する基本的なルール、署名や押印の重要性などについてみてきました。
今回は、契約書のタイトルに関して解説していきます。
2 書類のタイトルと契約書の関係
一般の方も、書類のタイトルが「賃貸借契約書」、「消費貸借契約書」、「売買契約書」など「〇〇契約書」というタイトルの書類が契約書に当たるのは容易にご理解いただけると思います。
逆に「〇〇契約書」といったタイトルでない書類は、契約書ではないというイメージをお持ちではないでしょうか。
しかし、この理解は誤りです。
契約書とは、あくまで2人以上の当事者が結ぶ権利や義務に関する合意の内容を書面にしたものです。
つまり、「契約書」というタイトルである必要はないのです。
例えば、「合意書」などといったタイトルはもとより、「覚書」や「念書」などといったタイトルであったとしても、当事者同士が権利や義務について合意した内容を記載しているのであれば契約書といえるのです。
3 契約書のタイトルと法的な効果、拘束力
それでは、どのようなタイトルであっても契約書といえるのだとして、タイトルによって法的な効果や拘束力は変わるのでしょうか。
例えば、「覚書」よりも「合意書」や「契約書」といったタイトルの書類の方が、法的な効果や拘束力が強い書類だという印象を持つのではないでしょうか。
しかし、これも誤りです。
契約書がどのような法的な効果を持つのか、どの程度の拘束力を持つのかというのは、あくまで契約書の中身、つまり、どのような内容の合意をしたのかどうかで決まります。
そのため、契約書のタイトルが「〇〇契約書」であろうと「〇〇に関する合意書」であろうと「〇〇に関する覚書」であろうと、その中身が同じなのであれば、法的な効果や拘束力は基本的に同じなのです。
もっとも、当事者が合意を結んだ経緯などから、例えば強い拘束力を持たすつもりがなく、そのことを反映させるために、契約書の中にそのような事項を記載するのに加えて、タイトルもあえて「契約書」ではなく「覚書」にしたというような場合もあるかと思います。
しかし、この場合も、あくまで当事者が合致した意思がどのような内容だったか(この例でいえば強い拘束力を持たさないという意思)、契約書の内容がどうだったかというのが重要で、タイトルのみで一義的に決まっているわけではないのです。
最後に
今回は、契約書のタイトルについて解説していきました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも会社内でのトラブルを回避するための対応・アドバイスにも力を入れています。
契約書の確認をしてほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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