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宗教法人の不祥事事例と予防法務の重要性

宗教法人やNPO法人では、寄付金の不正流用や幹部による詐欺、反社会的勢力の介入など様々な不祥事・刑事事件が発生し得ます。ひとたびこうした問題が明るみに出れば、信者や支援者からの信頼は大きく揺らぎ、寄付離れや組織離脱を招いてしまいます。最悪の場合、所轄庁(文化庁や都道府県)から調査を受け、宗教法人格の剥奪(解散命令)にまで発展するリスクもあります。
本記事では、宗教法人における主な不祥事の事例と、それらを未然に防ぐ予防法務の重要性について、法律の専門知識がない方にも分かりやすく解説します。宗教法人法やNPO法の基本ポイントにも触れ、弁護士と連携した予防策が信頼維持や刑事責任の回避、組織運営の安定にどのように寄与するかを見ていきましょう。
宗教法人で起こりやすい主な不祥事の事例
まずは、過去に宗教法人や非営利法人で問題となった典型的な不祥事の例をいくつか紹介します。
- 寄付金の不正流用・不透明な資金利用: 組織の資金が本来の宗教活動や公益目的に使われず、幹部の私的な目的に流用されるケースです。例えば、信者から集めた寄付金やお布施が代表者個人の生活費に充てられていた事例も報告されています。また、寄付金を名目と異なる用途に使用したり、架空の募金活動で集めた資金を裏金化するといった不正も各地で発生しています。このような資金の不正使用は発覚すれば信者の善意を裏切る行為となり、深刻な信用失墜を招きます。
- 宗教法人格の悪用(マネーロンダリング・脱税): 宗教法人は寄付金への非課税など特別な税制優遇を受けられるため、その法人格自体が犯罪収益の洗浄や脱税目的に悪用される事件が後を絶ちません。実際に、暴力団が休眠状態の宗教法人(活動実態のない不活動宗教法人)を買収し、闇資金の受け皿として利用したケースが報告されています。海外からの不正資金を国内の宗教法人経由で移動させるマネーロンダリング手法が確認された例もあり、行政当局も問題視しています。こうした法人格の悪用を防ぐため、文化庁は近年、不活動宗教法人の実態把握と整理(必要に応じた解散命令請求)を各都道府県に徹底するよう通知を出しています。法人格が犯罪インフラに利用されると、当該法人には厳しい処分が科されうるため注意が必要です。
- 幹部による詐欺行為: 教団幹部が信者に対し高額なお祓い料や除霊代を要求し、実態のない「救済」サービスで金銭をだまし取る詐欺事件も起こり得ます。例えば、僧侶に霊能力があると装って相談者から多額の金銭を詐取した明覚寺事件では、詐欺罪の成立に加え宗教法人法違反(公共の福祉を著しく害する行為)と認定され、その宗教法人に解散命令が出されています。このような詐欺的商法は被害者の告発次第で教団全体の信用問題に発展し、刑事事件となれば組織解散につながる重大リスクとなります。
- 会計不正(帳簿改ざん・虚偽報告): 帳簿の改ざんや二重帳簿の作成、収支報告書の虚偽記載といった行為により組織の財務状況を不透明にする不正も見られます。内部牽制や監査体制が弱い団体ではこうした不正を見逃しやすく、不祥事の温床となりがちです。実際、宗教法人の中には法律上営利企業のような厳格な監査義務がなく「性善説」に頼った運営を行っているところもあり、内部統制の不備が指摘されています。適切な会計管理と情報開示が欠如すると不正が発生しやすいため、後述するように複数人での出納チェックや定期的な外部監査の導入など透明性確保の仕組みづくりが重要です。
- 反社会的勢力の介入・ダミー宗教法人化: 暴力団など反社会的勢力が宗教法人やNPO法人を隠れ蓑にして不正活動や資金洗浄を行うケースもあります。架空の信者名簿を提出して認証を受けた疑いのある宗教法人が、実態はヤミ金融業(違法な高利貸し)を営んで摘発された事件も報告されています。このように組織自体が犯罪インフラとして利用されてしまうと、社会的非難は免れず、法人への解散命令や関係者の逮捕など厳しい措置につながります。宗教法人の設立要件は本来厳格ですが、不活動法人の乗っ取りや虚偽の申請によるダミー法人化を完全に防ぐことは難しく、日頃から反社会的勢力の接近を警戒し排除するガバナンス体制が求められます。
- セクシャルハラスメントや不祥事の隠蔽: 教団内部で起きた性的嫌がらせ(セクハラ)やパワハラ等のスキャンダルを組織ぐるみで揉み消そうとする対応も重大な問題です。近年は宗教界でもセクハラ・性被害に関する訴訟が相次いでおり、ある宗教法人では資金不正に加えて幹部による性的被害やパワハラの訴訟が同時発生した例も報じられています。内部で隠蔽を図れば被害者の二次被害を招くだけでなく、告発によりかえって世間の批判が強まりスキャンダルが拡大します。不祥事を隠す体質があると認識されれば組織存続に関わる深刻な打撃となるため、問題発覚時には適切な調査と公正な対応が不可欠です。
以上のような不祥事は、宗教法人に特有の立場を悪用したり管理体制の甘さに起因するものが少なくありません。実例としては、オウム真理教事件(地下鉄サリン事件など重大犯罪により法人格剥奪)や霊感商法による詐欺の明覚寺事件(前述の通り解散命令)などが挙げられます。また最近では、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)による信者への過剰な献金勧誘が社会問題化し、文部科学省が宗教法人法に基づく「質問権」を初めて発動して教団の運営実態や巨額献金について報告を求める事態に発展しました。政府は2023年に「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律」という新法を施行し、霊感商法まがいの悪質な寄付勧誘行為の禁止や被害者救済の強化にも乗り出しています(令和5年法律第81号)。このように宗教法人を巡る不祥事には世間の厳しい目が向けられており、一度問題が起これば刑事責任追及のみならず行政処分や法改正にまで及ぶ大きな影響を及ぼすのです。
宗教法人法とNPO法の基本ポイント
宗教法人やNPO法人の関係者が不祥事予防に取り組むには、まずそれぞれの法律上の立場や義務を正しく理解しておくことが大切です。ここでは専門家でない方にも分かるよう、宗教法人法とNPO法(特定非営利活動促進法)の基本ポイントを押さえておきましょう。
- 宗教法人法の概要: 宗教法人法は、信教の自由を尊重しつつ宗教団体に法人格を付与するための法律です。1951年に制定され、文化庁が所管しています。この法律に基づき、神社・寺院・教会など宗教の教義を広め儀式行事を行う団体(宗教団体)に法人格が与えられます。法人格を取得した宗教団体は、財産を法人名義で所有・管理できるようになり、対外的な契約や責任負担も法人として行えるようになります。一方で、公序良俗に反する活動をしないことや所轄庁への各種届出・報告義務など、自主性と公共性のバランスを図るための規律も定められています。例えば宗教法人法第81条では、「法令に違反し著しく公共の福祉を害する行為」を行った宗教法人に対し、所轄庁が裁判所に解散命令を請求できると規定しています。過去には地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教(1995年)や詐欺事件を起こした明覚寺(2002年)に対して、この規定に基づく解散命令が実際に発令されました。また1996年の法改正で導入された所轄官庁の質問権は、宗教法人の法令違反が疑われる場合に運営状況の報告や質問を行える制度で、2022~23年に旧統一教会への適用が初めて行われています。このように宗教法人法は、信教の自由を最大限保障しつつ、宗教法人のガバナンスや公共性の確保にも一定の役割を果たす法律です。
- NPO法の概要: 特定非営利活動促進法(NPO法)は、ボランティア団体など営利を目的としない民間団体に法人格を与え、その健全な発展と公益の増進を図るための法律です。1998年に制定され、所管は内閣府や各都道府県です。NPO法人は、不特定多数の利益に資する非営利活動(例えば福祉、教育、環境保全、地域安全など法定20分野)を主な目的とする団体がこの法律に基づき法人認証を受けて成立します。営利を目的としないこと、構成員へ利益配分をしないことが大前提であり、役員は3名以上の理事と1名以上の監事を置くなど一定のガバナンス体制も義務付けられています。また宗教上の儀式行事や政治活動を主目的とする団体はNPO法人にはなれない(法律の適用対象外)という点で、宗教法人とは制度上明確に区別されています。NPO法人は毎事業年度ごとに事業報告書や財産目録、会計書類を所轄庁へ提出し一般に縦覧(公開)させる義務があり、情報開示・説明責任が重視されているのも特徴です。以上のようにNPO法は市民による公益活動を支援する一方で、組織運営の適正さと透明性を保つ枠組みを提供しています。
※この法律解説は最低限のポイントを平易にまとめたものです。実際には宗教法人法とNPO法で設立手続や内部機関のルール、監督・処分の仕組みなど細かな違いがありますが、詳細は専門家に確認する必要があります。
不祥事を防ぐ予防法務の重要性
以上の事例や法制度を踏まえると、宗教法人にとって事前に不祥事リスクを減らす「予防法務」に取り組むことがいかに重要かがお分かりいただけるでしょう。予防法務とは、問題が発生してから対処するのではなく、平時から内部体制を整備し法律の専門家と連携して不正や違法行為を未然に防ぐ活動を指します。以下では、予防法務として宗教法人が講ずべき具体的な対策と、その効果について解説します。
内部調査の徹底と是正措置
万一、不祥事の兆候や疑いが生じた場合には、早期の段階で内部調査を行い事実関係を明らかにすることが肝要です。第三者性・中立性を担保するため、できれば弁護士など外部の専門家を調査に加えることが望ましいでしょう。例えば資金流用の疑いがある場合、弁護士が関係資料の精査や関係者へのヒアリングを主導することで、証拠の保全と不正の全容解明に大きく寄与します。セクハラなどデリケートな案件でも、被害申告者・加害者双方から公平に事情を聴取し適正な判断を下すには、弁護士が同席して助言することが有効です。内部調査の結果、不正や問題行為が確認できた場合は、隠蔽することなく速やかに是正措置(改善策)の実行に移ります。具体的には、発覚した不正に関与した責任者の処分、被害者への適切な補償、組織のガバナンス改革、再発防止策の策定などがあります。場合によっては所轄庁や捜査機関への違反事実の届出、被害者との示談交渉の検討、刑事告発の判断なども必要になるでしょう。これら一連の対応は専門知識なしに的確に進めるのは難しく、弁護士の関与が組織防衛の要となります。問題発生後の初動を誤らず誠実に対処することで、被害拡大の防止と組織の信頼回復につなげることが可能です。
ガバナンス体制の強化と研修・コンプライアンス対応
不祥事を起こさないための仕組み作りも予防法務の柱です。宗教法人やNPO法人は、その特質上どうしても内部統制が緩みがちであるため、平常時から法令順守のガバナンス体制を整備しておく必要があります。まず、宗教法人法やNPO法、関連ガイドラインに則した定款(規則)や諸規程を整備し、役員の権限と責任範囲を明確化します。次に、会計面では複数人によるチェック体制や定期的な外部監査の導入など、資金の流れを常に透明化する仕組みを取り入れましょう。法律上、宗教法人には営利企業のような強制的監査制度がないため、なおさら内部監査・外部監査を自主的に活用する意義は大きいです。内部統制が不十分で「うちの団体に限って不正は起きない」という性善説に頼った運営では、往々にして不正の温床になりやすいと指摘されています。そうした油断を排し、二人以上の目でチェックする仕組みやお金の流れを見える化する工夫を凝らすことが、結果的に関係者自身を守る手段にもなります。
さらに、人材・組織面での取り組みも欠かせません。教団職員や関係者に対するコンプライアンス研修や法令知識の啓発を定期的に実施し、寄付金の取扱ルールやハラスメント禁止など基本的な遵守事項を周知徹底することが重要です。ハラスメント防止のための相談窓口を設置し、万一相談があった場合は速やかに外部有識者を交えた第三者委員会で調査する仕組みを用意しておきます。最近は宗教法人や公益法人でもハラスメント問題が社会的注目を集めているため、ここに適切に対応できる体制整備はリスク管理上不可欠です。内部で問題を隠蔽することは厳禁であり、弁護士の助言のもと事実関係を公正に調査し再発防止策を講じることが、ひいては組織全体の名誉と信頼を守ることにつながります。
また、反社会的勢力排除の観点からも研修やチェック体制を敷きましょう。例えば寄付者や取引先の背後関係について必要に応じ調査を行い、暴力団等と関係が疑われる場合は毅然と契約を断ること、役員や職員自身が怪しげな活動に関与しないよう倫理規程を設けることなどが考えられます。これらは一見宗教活動とは無縁に思えるかもしれませんが、組織を守るためには重要な予防策です。
弁護士と連携するメリット
予防法務を推進する上で、弁護士を顧問に迎えておくメリットは非常に大きいと言えます。まず平時から専門家の視点で組織運営をチェックしてもらえるため、不備のある規程や法令違反の芽を早期に発見し修正できます。また万一トラブルが発生しても、初動で適切な対応を取るため迅速に相談できる体制が整っていれば安心です。証拠保全や被害拡大防止、当局報告など、何を優先しどう対処すべきかについて客観的なアドバイスが得られるため、事態の悪化を防ぐことができます。さらに対外的な説明や被害者対応においても、法的に妥当で誠実な対応を弁護士の助言を受けながら進めることで、組織の透明性と誠意を示すことができます。宗教法人法やNPO法といった特殊法人に関する規制にも精通した弁護士であれば、行政機関への報告書作成や是正計画の提出といった局面でも心強い支援が受けられるでしょう。
特に深刻な不祥事では所轄庁や警察などによる調査・聴取が行われる場面も想定されます。その際、弁護士のサポートなくして適切に対応するのは困難です。行政への説明や交渉、求められた資料の精査提出、捜査機関への協力など、一連の手続きを法律に沿って踏むことで、最悪の事態(法人格の剥奪や刑事処分)を回避できる可能性が高まります。実際、文化庁や都道府県からの質問権の行使や解散命令請求に直面した際、弁護士とともに誠意ある対応策を講じて当局の信頼を得ることが事態沈静化の鍵となります。
さらに、顧問弁護士がいることで日常的な些細な法務相談もしやすくなり、「これは法律的に問題ないか?」といった疑問をすぐ解決できる利点もあります。宗教法人の運営は株式会社の経営とは異なる公益性ゆえの難しさがありますが、その点に詳しい専門家の継続的サポートを受ければ、内部の役員も安心して本来の宗教活動や社会貢献に専念できるでしょう。このように弁護士と連携した予防法務は、組織の信頼維持に直結するのみならず、万一の際の刑事責任の回避や安定した組織運営にも不可欠な土台となるのです。
予防法務の効果とおわりに
適切な予防法務を導入することで得られる効果は計り知れません。
第一に、信者・支援者や社会からの信頼維持・信頼回復が期待できます。透明性の高い運営と迅速な問題対処により、「この法人はしっかりガバナンスが効いている」という安心感を与えられれば、寄付者の離反を防ぎ組織の名誉を守ることにつながります。
第二に、違法行為への関与を未然に防ぐことで結果的に刑事責任を回避し、役職員が逮捕・処罰される事態や法人自体が解散命令を受ける最悪のシナリオを避けることができます。
コンプライアンス遵守は「攻めの宗教活動」を続けるための安全装置であり、違法リスクが低ければこそ本来の布教や社会貢献活動に専念できるのです。
第三に、内部統制と危機管理が機能することで組織の安定的な運営が実現します。
スキャンダルによる突然のトップ更迭や信者大量離脱といった混乱を防ぐことで、教団の継続性が確保され教義の伝承や公益事業も途切れません。また、健全なガバナンスの下では若手人材も育ちやすく、将来世代への引き継ぎもうまくいくでしょう。
昨今の報道を見ると、宗教法人も一般企業や他の公益法人と同様に高い説明責任を求められる時代になっています。社会の信頼なくして布教の自由もままならないことは、多くの事件が物語る教訓です。不祥事対応は「起きてから考える」では手遅れになる場合もあります。ぜひ弁護士等の専門家と協力しながら予防法務に取り組み、日頃から組織の健康診断と体質改善を続けてください。それこそが信者の皆さんの善意を守り、宗教法人本来の使命を全うするための何より堅実な道と言えるでしょう。
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ファクタリング事業の法的リスクとは?貸金業法違反・行政処分の可能性を徹底解説

はじめに:ファクタリングとは何かと基本的な法的位置づけ
ファクタリングとは,企業などが保有する売掛債権(支払期日前の請求書債権など)をファクタリング業者が買い取ることで,早期に資金化するサービスです。法的には債権の売買(債権譲渡)契約にあたり,本来は金銭の貸し借りではありません。そのため,適法に行われるファクタリング取引については貸金業法(貸金業の規制等に関する法律)や利息制限法・出資法による直接の規制対象とはならず,貸金業の登録も不要とされています。実際,民法も「債権は,譲り渡すことができる」と規定しており,債権譲渡(ファクタリング)は法的には想定された契約形態です。
しかし一方で,ファクタリング取引の実態によっては「偽装ファクタリング」と呼ばれる違法性を及びたスキームとなるケースもあり,近年社会問題化しています。以下では,BtoB(企業間)ファクタリングとBtoC(対個人)ファクタリングに関連する法的リスクについて,主要な論点ごとに整理します。
貸金業法違反となるリスク(偽装ファクタリングの問題)
貸金業法違反とは,本来貸金業登録が必要な「金銭の貸付け」を無登録で行うことや,法定の上限金利を超える金利(手数料)を徴収する行為などを指します。ファクタリングは形式上「債権の売買」ですが,その契約内容・経済実態によっては実質的に貸付と同様の機能を果たす場合があり,その場合は貸金業法上の「金銭の貸付け」に該当する可能性があります。貸金業法第2条第1項や出資法第7条は,手形の割引や売渡担保など形式上は貸付以外の方法による金銭の交付も広く「貸付け」に含めて規制すると定めており,形式ではなく実態で判断されます。
偽装ファクタリングと疑われる典型例として,以下のようなケースが挙げられます。
- 償還請求権(買戻し特約)がある場合:債権譲渡契約でありながら,売主(債権譲渡人)が一定期限までに債権を買い戻す義務を負う契約になっているケースです。売主が自ら債権を買い戻すことが予定されている場合,ファクタリング業者は債権回収不能リスクを事実上負担せず,債権を担保とした貸付と同様の構造になります。特に二者間ファクタリング(売掛先に通知せず,債権者とファクタリング業者の二者だけで完結する取引)だと,買戻し条項を付され,債権者(債権の売主)は期限までに必ず債権を買い戻さざるを得ない立場となり,実質的な借入れと同視されやすくなります。
- 債権回収を委託する形式だが実質的に元の債権者が返済する場合:売掛先への債権譲渡通知を行わずに,債権者自身が売掛金を回収して後日ファクタリング業者に支払う契約(回収委託型)も,結局は債権者が自ら資金を返還している構図です。債権者(債権の売主)が取引先にファクタリング利用を知られたくない事情(債権譲渡禁止特約や信用不安回避のため通知を留保)があるためにこうした形態になりますが,これも経済的には「債権を担保に資金を借りて後で返す」ことと同じであり,貸付とみなされ得ます。
上記のようにファクタリング業者がリスクを負わず,債権者が実質的返済義務を負う構造では,裁判例上もしばしば「金銭消費貸借に準じるもの」と評価されています。大阪地方裁判所平成29年3月3日判決(平成26年(ワ)11716号)では,ファクタリング業者が債権回収リスクをほとんど負担せず高額の手数料利益を得ており,債権者は買戻しせざるを得ない立場だったことから「本件取引では金銭消費貸借契約の要素たる返還合意があったものと同視できる」と判断されています。
その上で,このような実質的貸付には利息制限法が類推適用され,法定上限を超える手数料部分は不当利得(過払い金)として返還請求し得ると判示しています。つまり,偽装ファクタリングは無登録営業であれば貸金業法違反(無登録営業罪)となり得るだけでなく,手数料が高金利に該当すれば利息制限法違反(超過利息の無効)となり,過払い金返還義務が生じるリスクがあります。
金融庁も「経済的に貸付と同様の機能を有するものは貸金業に該当するおそれがある」と明言し,高金利の偽装ファクタリングへの注意喚起を行っています。
行政当局による処分・指導の事例
金融庁や消費者庁など行政当局も,偽装ファクタリングへの対策を強化しています。金融庁は公式サイト上で,中小企業向けの偽装ファクタリングや個人向けの「給与ファクタリング」が確認されているとして注意喚起を発出し,「形式的に債権売買でも実質が貸付なら貸金業法の規制対象となる」との見解を示しています。特に個人の給与債権を扱うケースは後述のとおり明確に違法とされており,「給与ファクタリングを業として行うことは貸金業に該当します(貸金業登録が必要)」とされています。
行政処分の具体例としては,高金利の違法な貸付け(偽装ファクタリング)を行っていたため,関東財務局から貸金業法に基づく業務停止命令を受けたケースがあります。この事例では,表面上はファクタリング契約を装いつつ法定利率を大幅に超える手数料を徴収していたことが問題視されました(金融庁公表資料によれば法令違反〔高金利〕が処分理由とされています)。このように,行政当局は無登録で実質的な貸付を行う業者に対し,営業停止や業務改善命令などの処分を下すことがあります。
加えて,悪質な場合には警察と連携して摘発する方針も取られており,実際に偽装ファクタリング業者が出資法違反(高金利)や貸金業法違反で逮捕・起訴された例も報じられています。
また,消費者庁も個人向け違法融資への対策として注意喚起を行っています。消費者庁は「違法な貸付(ファクタリング等)にご注意ください!」という公表資料の中で,給与ファクタリングは高額手数料により利用者の生活を破綻させるおそれがある違法なスキームであると警告しています。同資料では,新型コロナ禍で生活資金に困った消費者が標的にされている状況を踏まえ,無登録業者を利用しないよう呼びかけるとともに,金融庁・警察庁と連携した監視強化を表明しています。さらに国民生活センターや日本貸金業協会など関係機関とも協力し,被害防止のための情報発信や相談窓口の整備が進められています。
近年では,「後払い現金化」「商品券買取現金化」等,一見ファクタリングとは異なる形を装いつつ実質的に貸付けとなる新手の手口も登場しており,行政はこれらも含めた包括的な取締りを強化しています。
ファクタリング事業の違法となるスキーム:典型例と裁判例
上述の偽装ファクタリング以外にも,ファクタリング事業に関連して違法とされる典型的なスキームや争点があります。ここでは主な例と,それに関する裁判例・判例上の判断を紹介します。
- 給与ファクタリング(BtoC型ファクタリング):個人が勤務先に対する将来の給与債権をファクタリング業者に「売却」し,業者から前払いの形で現金を得るスキームです。一見すると給与の債権譲渡ですが,労働基準法第24条第1項が「賃金は直接労働者に支払わなければならない」と定めているため,債権を譲り受けた業者であっても直接使用者(会社)から給与を受け取ることはできません。その結果,利用者(労働者)は勤務先への債権譲渡通知を避けるため自ら買戻し(実質的な返済)をせざるを得ない状況に置かれます。
最高裁も令和5年2月20日決定において,「『給与ファクタリング』と称する取引は顧客(労働者)からの返済を予定した貸付である」と明確に判示し,無登録でこれを業として行うことは貸金業法違反のヤミ金融にあたると司法判断を示しました。この事案では法定金利の約10倍もの手数料を徴収していた業者が出資法違反でも起訴されており,最高裁決定を受けて日本司法書士会連合会も「給与ファクタリングは利息・手数料の額にかかわらず違法」とする会長声明を発出しています。つまり給与ファクタリングは構造上,合法な取引形態として成り立たず常に違法(貸付)と評価されることが明確化されたと言えます。実際,行政も「通常,個人としてファクタリングを利用する機会はない」が「給与ファクタリングという手法で個人に貸付けを行うヤミ金融」が存在すると指摘しており,BtoC型の給与ファクタリングは違法な高利貸しとして認識されています。
- 二者間ファクタリング(BtoB型の偽装貸付):前述したとおり,事業者向けのファクタリングで売掛先非通知型(二者間取引)のものは,売掛先への通知や承諾を得る通常の三者間ファクタリングに比べて取引条件が厳しくなる傾向があります。債権者である中小企業が資金難から二者間ファクタリングを利用するとき,買戻し特約付きや無償の回収委託契約を併用するケースでは,経済的に年利100%超の高コストとなることも珍しくなく,これは事実上違法金利の貸付を受けているのと同じ負担になります。こうしたスキームについて,近時の裁判例では公序良俗違反による契約無効が認定された例があります。札幌高等裁判所令和4年7月7日判決では,債権者(利用企業)の切迫した資金需要に乗じて短期間で高額の利益を得る手段として債権譲渡契約(買戻型)が締結されたものと認定し,「貸金関連各種規制を潜脱し…締結されたものであって公序良俗に反し無効である」と判断しました。同高裁判決は「形式上は債権譲渡でも,実質は譲渡債権を担保とする金銭消費貸借に近い機能を有していた」と取引の経済的実態を指摘しており,貸金業法・出資法の趣旨(実質貸付の広範な規制)に照らした判断枠組みを示唆しています。
他方で,真正な三者間ファクタリング(ノンリコース,売掛先にも通知・承諾を得た債権譲渡)については,裁判例上も「譲渡人に遡及義務(買戻し義務)がない純粋な債権売買であり,貸金業法が予定する貸付け等とは性質を異にする」として認められています。つまり,BtoBファクタリングであっても債権譲渡契約が実質的に金銭消費貸借に近づくほど違法リスクが高まる一方,ファクタリング会社が債権リスクを真正に負担する取引形態であれば違法とは評価されにくいといえます。
- 架空債権のファクタリング:実在しない売掛債権や既に回収済みの債権を偽ってファクタリング会社に売却し,資金をだまし取る行為は明白な詐欺罪に該当します。このようなケースではファクタリング契約自体が初めから目的の実現が不可能な無効契約と言え,発覚すれば刑事事件化する可能性があります。例えば架空の売掛金債権を複数のファクタリング業者に売却して約1億円を詐取した事例では,関与者が詐欺容疑で逮捕・起訴されています。架空債権はもちろん違法ですが,次に述べる二重譲渡も実質的に同様の問題を孕みます。
二重譲渡のリスクと契約の無効・取消し
二重譲渡とは,同一の売掛債権を複数のファクタリング会社に重ねて譲渡する行為で,悪質な資金調達手段として問題になります。債権の法律関係としては,最初の譲渡で債権はファクタリング会社Aに移転していますから,二社目以降への「譲渡」は原債権者に処分権のない債権を売ることになり,法律上無効ないし取消し可能な行為となります。二重譲渡が故意に行われた場合,ファクタリング会社を欺いて金銭を詐取したものとして詐欺罪にあたります。実際,資金繰りに窮した事業者が同じ債権を複数業者に売却して発覚した事案では,債権者(事業者)が詐欺で逮捕・起訴され,会社も倒産に追い込まれるという深刻な結果を招いています。
法的には,二重譲渡が発覚した場合,後から譲り受けたファクタリング会社との契約は履行不能・目的違法のため無効となり,受領済みの売買代金は返還義務の対象となります。善意のファクタリング会社に残された債権が無価値となるため,原債権者に対する損害賠償請求(不法行為または債務不履行に基づく返還請求)に発展することが通常です。裁判になれば契約の詐欺取消しが主張されることも考えられますが,悪質な場合は民事責任を追及するまでもなく刑事事件化していくことも考えられます。このような事件種について判例集に顕著な蓄積はありませんが,二重譲渡は明白な不法行為であり契約も成立当初から無効となるという点に異論はなく,ファクタリング業界では最大のリスク要因の一つと認識されています。
このリスクを低減するため,日本では債権譲渡登記制度が整備されています。法人(会社)が金銭債権を譲渡する際,債務者への通知に代えて法務局への登記を行うことで譲渡の対抗要件を備える制度です(債権譲渡登記特例法)。ファクタリング会社は二者間ファクタリングの場合,この登記を利用しておけば他社への二重譲渡発覚時に優先権を主張できます。もっとも登記には費用がかかるため,中小の事業者では利用が徹底されておらず,結果として債権者が意図的に二重譲渡に及ぶ余地が残っているのが現状です。ファクタリングを提供する事業者は契約時に債権譲渡登記や債務者確認などの手続きを講じ,二重譲渡の未然防止に努めることが不可欠です。万一発覚すれば前述のように契約無効・損害賠償に加え,刑事罰のリスクまで生じる点を認識する必要があります。
BtoBとBtoCにおけるリスクの違いまとめ
最後に,企業間ファクタリング(BtoB)と個人相手のファクタリング(BtoC)で異なる点がある主なリスク・留意点をまとめます。
- 法規制・適法性:BtoBファクタリングは,中小企業の資金繰り支援手段としても利用されており,債権譲渡しての実態である限りは適法な金融です。適切に行われる限り,貸金業法の対象外であり利息制限法の制約も受けません。
一方,BtoCファクタリングは給与ファクタリングに代表されるように,基本的に合法な枠組みを構築しにくいと考えられます。労働者の給与債権は法律上第三者への譲渡が想定されておらず,事実上貸付以外の何物でもないからです。したがって,個人に対するファクタリングを標榜する業者に対しては監督官庁からの厳しい目が向けられることになるでしょう。
- 利用者保護と監督当局の姿勢:個人を相手とする違法なファクタリング(実質高利貸し)は,消費者被害(多重債務や生活破綻)を生むため行政の目も極めて厳しく,近年は警察・金融庁・消費者庁が一体となって摘発・啓発に動いています。最高裁の判断も出たことで,給与ファクタリングは今後一層排除されていくでしょう。これに対しBtoBファクタリングについては,現時点で事業者に対する専用の許認可制は導入されておらず(※通常の売掛債権売買は自由),明確な業法上の監督対象にもなっていません。もっとも金融庁は事業者向け偽装ファクタリングの問題を認識しており,中小企業庁等とも連携して啓発資料を作成するなど実質的な監督・指導の強化を図っています。今後,業界の自主規制や新たな法規制の検討が進む可能性も指摘されています。
- 契約トラブルの態様:BtoBの場合,債権譲渡禁止特約への対処(二重譲渡の予防を含む)や,債権額に対する手数料相当額(ディスカウント率)の妥当性などが主な論点となります。手数料が高すぎる場合でも直ちに違法とはならないものの,前述のように極端に高利な設定や形骸化した売買契約であれば法的無効リスクがあります。BtoCではそもそも契約自体が無効・違法となるケースがほとんどであり,発生するトラブルも違法業者による取り立て被害や過払金返還請求といった,貸金・ヤミ金融問題の様相を呈します。個人が被害者となる分,救済措置(警察相談や消費生活センターへの通報など)も公的に用意されています。一方,企業が相手のファクタリング紛争では当事者が事業者同士となるため,裁判所も一律の判断基準を示すことを慎重に避ける傾向があると指摘されます(多くの事案が和解で解決している実情があります)。この点も,明白に違法と断じられるBtoC取引との違いと言えるでしょう。
おわりに:最近の動向
近年,ファクタリングを取り巻く法規制強化の機運が高まっています。令和5年(2023年)には最高裁が給与ファクタリングを違法と断じ,違法業者排除の流れを後押ししました。また,事業者向けファクタリングについても各地の裁判例が積み重なりつつあり,偽装ファクタリングの判断基準が少しずつ明確化されてきています。金融庁や消費者庁は引き続き悪質業者への監視を強める方針であり,利用者側も契約内容に少しでも不安があれば弁護士等の専門家に相談するよう呼びかけられています。
結論として,BtoBファクタリングとBtoCファクタリングでは法的リスクの質と深刻さが異なりますが,共通して重要なのは「形式ではなく実態」を見極めることです。ファクタリング契約が経済実態として貸付と同視される場合,たとえ契約書上は債権譲渡と書かれていても違法リスクを免れません。ファクタリング事業者は健全なスキームを遵守し,利用者(債権者)は契約条件を慎重に確認することで,違法な取引に巻き込まれないよう十分注意する必要があります。法律・ガイドライン・判例で示されたポイントを踏まえ,安全で適法なファクタリングの利用・運営に努めることが肝要です。
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スニーカー販売をするために必要になる許可②
【事例】
Aさんは、福井県敦賀市に住む会社員ですが、大学生の頃からの趣味でスニーカーの蒐集をしていました。
ただ、結婚を機に蒐集していたスニーカーを手放そうと考えて、オークションサイトやフリーマーケットアプリで売却をしたところ、思ったよりも高値で売却することができました。
その経験をきっかけに、Aさんは、会社員の傍ら、副業としてスニーカーの転売をしようと考えました。
Aさんとしては、オークションサイトやフリーマーケットアプリ、中古販売店などから、相場よりも安く希少なスニーカーを見つけてきて購入し、オークションサイトで転売しようと考えています。
また、事業が軌道に乗れば会社を作って転売をしていこうとも考えています。
しかし、Aさんは、初めて副業をすることから、許可など法律的に必要になる手続きがあるのか不安になりました。
もしも許可などの必要な手続きを怠った場合、本業の方にも影響があるのではないかと心配で、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
前回の記事では、Aさんがやろうとしている中古品の転売という事業は古物営業法の規制を受ける事業であること、そして、都道府県公安委員会の許可が必要となる一定の「古物営業」(古物営業法2条2項)とはどのようなものかをみてきました。
そして、Aさんの場合にも、一部の取引が古物営業法2条2項1号に該当する可能性があると解説してきました。
今回は、古物営業法2条2項1号に該当する具体的な内容について解説していきます。
2 許可が必要となる取引とは
許可が必要となる「古物営業」の1つとして、古物営業法は、「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」(古物営業法2条1項1号)を挙げています。
この規定を読み解く場合、2つの要素があると考えると分かりやすいでしょう。
1つは、前半の「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業」である要素です。
もう1つは、後半の「古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」だという要素です。
分かりにくいのは後者の要素でしょう。
まず、「自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの」、つまり、自分の売ったものを買い戻す場合は許可が必要な「古物営業」には該当しないということです。
そして、「古物を売却すること」「のみを行うもの」も該当しません。
つまり、“古物を買って、古物を売る”のは該当しますが、“新品を買って、(買ったことによって古物になった)古物を売る”場合や、“(買わずに)無償で貰った古物を売る”場合は、該当しないのです。
Aさんの場合には、元々蒐集していたスニーカーを売却する場合や、新品のスニーカーをメーカーや小売店から購入して転売する場合は、古物営業法2条2項1号に該当せず、「古物営業」とはいえないでしょう。
しかし、オークションサイトやフリーマーケットアプリ、中古販売店などで仕入れて転売するのは、「古物」(古物営業法2条1項)を購入してから売却することになりますから、「古物営業」に該当しますので、許可を受けておく必要があります。
これはそのスニーカーが未使用品であっても変わりません。
次回以降の記事では、許可を得る手続などについて解説していきます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に関わってきた経験を活かし、そもそも法律に違反しないための対応・アドバイスにも力を入れています。
許認可申請についてアドバイスがほしい、継続的に弁護士からアドバイスを受けたいなどといったご要望の方も、一度、あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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学校法人における刑事リスクと初動対応の重要性
学校法人や教育機関では,体罰や資金不正,ハラスメントなど,刑事事件に発展し得る不祥事やコンプライアンス違反が発生する可能性があります。
こうした問題が起これば,学校の信用失墜や法的責任の追及に直結するため,一般職員であっても危機意識を持ち,適切な対応策を理解しておくことが重要です。特に,問題発生直後の初動対応の巧拙がその後の展開を大きく左右すると指摘されています。
本記事では,学校法人で実際に起こりうる具体的な刑事リスクの例を挙げ,初動対応の重要性を確認します。
さらに,早期に弁護士に相談することのメリットとして,事実調査や証拠保全,記者会見対応,被害者・加害者への対応,危機管理マニュアル整備支援といった観点から,専門家が果たす役割を詳しく解説します。
最後に,刑事事件対応に特化し,教育機関への対応実績も豊富な弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の体制と強みをご紹介します。

学校法人で起こりうる事件・リスク
学校法人が直面し得る刑事・リスクにはどのようなものがあるでしょうか。
例えば,教師による体罰・暴行,生徒への性的な不適切行為,管理職による資金の私的流用(背任罪),学校への架空請求等の詐欺が考えられます。
また,教職員間のパワーハラスメントやセクシュアルハラスメント,大学入試の不正操作,問題発覚後の不祥事隠蔽や証拠隠滅,公立学校の場合だと公文書の改ざん(虚偽公文書作成罪に該当)といった事態も起こり得ます。
なお,体罰は暴行罪や傷害罪に該当し得る明確な犯罪行為です。
こうした多様なリスクに対し,学校法人では日頃からコンプライアンス意識を高め,違法行為を防止する取り組みが求められます。
事例
実際に学校法人の内部で発生した事件の一例を見てみましょう。
例えば,2012年に大阪市の高校で,部活動顧問の教師から体罰を受けた生徒が自殺する痛ましい事件が起きています。
また,東京の有名大学では,元理事長が業務実態のない人物に巨額の報酬を支払い,約1億2000万円の損害を与えた背任事件で逮捕されました。
さらに,2018年には文部科学省の汚職事件を契機に大学の入試不正問題が発覚し,女子受験者を一律に減点していた大学が社会的批判を浴びました。
このほか,教職員によるハラスメントの隠蔽や,学校が重大ないじめ事件を警察に報告せず対処を誤ったケースも数多く報道されています。
近年では,各自治体や学校内で,教員による性暴力の防止のための取り組みも報じられています。
これらの事例は,学校法人でも刑事事件に直結する問題が起こり得ることを示しており,他人事ではないと認識する必要があります。
初動対応の重要性
不祥事や疑いが浮上した際には,初動対応が極めて重要です。
適切な初動措置を取ることで,被害の拡大防止と早期収束につながります。
具体的には,関係者や被害者の安全確保,速やかな事実確認と証拠の確保,関係機関への報告などが初動段階の基本となります。
不正・不祥事対応では「初動対応の巧拙がその後の展開を大きく左右する」とされ,迅速かつ適法な証拠保全や効果的な聞き取り調査を行うことが肝要です。
反対に,対応が遅れたり隠蔽を図ったりすれば,後になって事実が露見した際に組織への批判や処分が一層厳しくなる恐れがあります。
また,被害者の心情を無視した対応は二次被害を招き,将来的に学校法人への訴訟リスクを高める結果にもなりかねません。
こうした観点から,問題が判明した段階で速やかに専門家の助言を仰ぐことが望ましいでしょう。
事実調査と証拠保全
問題発生後は,まず事実関係の徹底した調査が欠かせません。
しかし内部だけで調査を行うと,どうしても客観性を欠いたり,関係者の証言の食い違いを適切に整理できなかったりする危険性があります。
そこで,弁護士のサポートのもと,証拠の保全と関係者からのヒアリング(聞き取り調査)を迅速かつ的確に行うことが重要です。
弁護士は,事案に応じて第三者委員会など外部の調査機関を設置すべきか否かといった判断についてもアドバイスできます。
例えば,教職員による体罰問題や生徒・学生間での暴力事件が生じた場合,迅速な事実確認と被害生徒の保護を弁護士の指導のもとで進めることが望ましいでしょう。
専門家の関与によって,調査の信頼性を確保し,後々の刑事・民事手続にも耐えうる証拠を押さえることが可能になります。

記者会見への対応
重大な不祥事が発覚すれば,報道機関から取材が殺到し,世間の注目を集めることになります。
その際,学校法人として適切な情報開示と謝罪を行うことで,事態の沈静化と信頼回復を図ることが不可欠です。
記者会見では事実関係や再発防止策を説明し,社会に向けて真摯な姿勢を示す必要があります。
とはいえ,会見での発言一つで法的責任に影響したり,説明不足がさらなる批判を招くリスクもあります。近年では,事件報道などに関して学校が会見を開いたところ,「不適切な対応だ」とSNS等で批判の的となり,いわゆる炎上騒動に発展するケースもあります。
そこで,弁護士の助言を受けながら発表内容や表現を精査し,場合によっては想定問答集を準備することも必要です。
マスコミ対応に精通した弁護士が会見に同席し,取材対応の代行や会見の進行支援,代理人としての発言を行うこともあります。
専門家の関与により,事実と誠意に基づいた適切な広報対応が可能となり,学校や関係者への風評被害の拡大を抑えることができるでしょう。
被害者・加害者対応と危機管理マニュアル整備
不祥事の対応では,被害者と加害者(行為者)それぞれへの適切な対処も極めて重要です。
被害に遭った生徒や職員には,心身のケアと適切な補償を行い,二次被害を防ぐ配慮が求められます。弁護士がいれば,被害者への謝罪や補償交渉も法的に適切な形で進められます。
一方,加害行為を行った職員や学生には,懲戒処分や刑事告発を含む厳正な対応が必要で,弁護士は学則や就業規則,法令に照らした処分手続について助言し,関係者への聞き取りを通じて再発防止策を検討します。
また,再発防止のため危機管理マニュアルの整備・見直しも欠かせません。
例えば,いじめ問題については,平時から弁護士の協力を得て調査手順や対応マニュアルを作成しておくことが有効です。
このように弁護士の知見を取り入れることで,組織として被害者と加害者双方に適切に対応し,将来的なリスク削減につなげることができます。
事務所紹介
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う全国規模の法律事務所です。
全国各地に拠点を構え,重大事件から身近なトラブルまで幅広い刑事案件で豊富な対応実績を有しています。
特に刑事弁護に精通した弁護士が在籍しており,学校・法人運営に関してもコンプライアンス違反の事例が発生した場合に学校や会社への影響を最小限にとどめる解決策を提案できるのが強みです。
弊所では24時間365日相談を受け付けており,初動段階から迅速に対応できる体制を整えています。
刑事事件対応のプロフェッショナルとして,学校法人の危機管理に万全を期す心強いパートナーとして対応します。
中小ネット通販事業者のための特定商取引法ガイド:広告表示義務とクーリングオフ規定
ネット通販事業者に向けて、特定商取引法の規制、特にクーリングオフに関する規定を解説します。

はじめに
近年はECサイトの発展などで誰にでも簡単にネット通販事業を開始できる時代であるといえます。
しかしながら簡単に始められるといっても、法令に違反した営業をしてしまえば当然営業を継続できなくなる処分を受けるおそれがあり、最悪、刑事罰を受けるおそれもあります。
ネット通販事業においては、特定商取引法の法規制が問題になり、法令を遵守して事業を行うことが重要になります。
今回の記事では実務上問題になりやすい、通販事業者が押さえておくべき広告表示義務とクーリングオフ制度について、その概要と違反時のリスク、実例、そして法令順守のポイントを解説します。
通信販売における広告表示義務とは
通人販売の広告において、どのような事項を表示する義務があるかについて解説します。
特定商取引法では、通信販売(オンライン取引)を行う事業者は広告やウェブサイト上に一定の事項を表示する義務があります。
表示義務を課されている事項については特定商取引法11条に定めがあります。
これは消費者が購入前に必要な情報を得られるようにするためで、表示すべき項目には、商品やサービスの販売価格(送料を含む)、代金の支払時期・方法、商品の引渡時期、申込み期間がある場合はその旨、契約の撤回・解除(返品特約)の条件、事業者の氏名(名称)・住所・電話番号などが含まれます。
これらの情報が広告に不十分だったり不明確だったりすると後々トラブルになりやすいため、法律で明確に表示事項が定められているのです。
広告表示義務に違反した場合のリスク
では広告表示義務に違反した場合にはどのような罰則やリスクが想定されるのでしょうか。
もし広告表示義務を怠ると、特定商取引法違反となり行政上の処分や刑事上の罰則の対象となります。
まず行政措置として、所管官庁(消費者庁や経済産業局等)から業務改善の指示や業務停止命令等の処分を受ける可能性があります。
行政処分については特定商取引法14条1項や特定商取引法15条1項に規定があります。
実際に通信販売の規定に違反すると、事業者は業務の一部または全部の停止を命じられるケースもあります。
さらに一部の悪質な違反は刑事罰の対象となり得ます。
たとえば広告への必要表示を欠落させた場合(広告表示義務違反)は、法律上100万円以下の罰金刑に処される可能性があります。指示に従わず違反行為を継続したような場合には、経営者や担当者個人が6か月以下の懲役刑を科されるリスクも生じます(法人も同様に罰金対象)。
このように表示義務を軽視すると営業停止のみならず刑事罰という重大なリスクがあるため、遵守が欠かせません。
虚偽・誇大広告に関する法規制について
単に表示を怠るだけでなく、事実と異なる内容や誤解を招くような広告表示をすることも特定商取引法で禁止されています。
特定商取引法第12条では、広告に「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良・有利と人を誤認させる表示」を行うことを明確に禁じています。
これは消費者に実態以上に有利な印象を与える誇大な宣伝を防ぐための規定で、いわゆる「不当表示」にあたります。
事業者がこのような虚偽・誇大広告を行った場合、行政当局からの指示や業務停止命令等の処分対象となるほか、100万円以下の罰金が特定商取引法72条で定められており、刑事罰が科されることもあります。
実際、2024年にはある健康食品通販会社が根拠のない「No.1」表示を広告に用いたことが特商法上の誇大広告禁止規定違反と認定され、業務停止命令を受けました。
このように誇大・虚偽な表示は景品表示法のみならず特定商取引法でも規制されており、中小事業者であっても注意が必要です。
クーリングオフ制度の概要(通信販売との関係)
クーリングオフとは、特定商取引法で定められた一定の取引類型において、契約後でも一定期間内であれば無条件で契約を解除できる消費者保護制度です。
典型的には訪問販売・電話勧誘販売・特定継続的役務提供(エステや英会話教室など)・訪問購入では契約書面を受け取ってから8日以内、連鎖販売取引(マルチ商法)や業務提供誘引販売取引では20日以内であれば、消費者は理由を問わず書面で契約解除を通知できます。
通信販売(通信契約)というだけではクーリングオフに関する規定がありません。
つまり、「インターネット通販で商品を購入した」というだけでは、法律上は原則として「冷静に考え直して返品・解約したい」という理由で一方的に契約を解除することはできないのです。
通販サイトで買い物をした後でのキャンセルや返品は、各店舗の定める返品特約や消費者契約法上の取消事由などに頼ることになり、訪問販売のような無条件解約制度は適用されません。
クーリングオフ妨害と刑事罰
もっとも、クーリングオフが認められる取引において、事業者が消費者のクーリングオフ行使を妨げる行為をすると厳しい罰則が科されます。
具体的には、事業者が嘘をついてクーリングオフはできないと思い込ませたり(不実の告知)、必要な情報をわざと伝えなかったり、威圧的な対応で消費者を困惑させたりしてクーリングオフを断念させる行為が該当します。
それ自体が特定商取引法違反であり、法律はこのようなクーリングオフ妨害行為を明確に禁止していて、違反した場合は2年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い刑事罰の対象となります。
実際に、「あなたは事業者扱いだからクーリングオフはできない」などと虚偽の説明をして消費者に解約をあきらめさせようとした悪質な業者が摘発され、業務停止命令を受けたケースがあります。
なお、一度でもこうした妨害行為があった場合、法律上はクーリングオフ可能期間が過ぎていても改めて解除できる救済措置(期間の延長)が認められるなど、消費者保護が図られています。
いずれにせよ、クーリングオフを妨げる行為は犯罪行為となり得ることを覚えておかなければなりません。
そのために事業者は、これから始めようとする取引の形態にクーリングオフが認められるかどうかについて、正確に判断する必要があります。
ネット通販事業者において問題になった実際の事例
行政処分、刑事罰が科された事例について紹介します。
「定期購入」について
例えば近年、いわゆる「定期購入商法」と呼ばれる手口(お試し商品から高額な継続課金に移行する通販形態)に対し、消費者庁が積極的に執行を行っています。
2023年9月から2024年4月までのわずか8か月間に、ダイエットコーヒーやサプリメント、電子タバコ等を販売していた複数の通販事業者に対し、最終確認画面での表示義務違反を理由に業務停止命令などの行政処分が合計3件出されました。
いずれも商品申込みの最終画面において分量や価格、支払時期等の必要情報を適切に表示せず、消費者を誤認させたことが問題視されました。
クーリングオフ関連の違反
前述のように電話勧誘で「クーリングオフはできない」と消費者に誤った説明をして契約解除を妨害した業者が摘発され、3か月間の業務停止(取引の一部禁止)処分を受けています。
仮に、ネット販売事業で販売している商品でも、電話勧誘を行っていれば通信販売ではなく電話勧誘販売に該当していると判断される可能性が高いので、この場合クーリングオフができることは適切に情報提供する必要があります。
これらのケースは中小事業者であっても法律違反があれば行政から厳しい措置がとられること、ひいては刑事罰のリスクに直面し得ることを示すものです。
法令順守のためのポイントと対策
最後に、特定商取引法を順守し刑事罰リスクを避けるための実務上のポイントをまとめます。
必要表示事項の徹底
販売価格や送料、支払方法、引渡時期、事業者情報(名称・住所・電話番号)、返品特約の有無など、法定の表示事項は漏れなく広告やサイト上に明記しましょう。
とくに自社サイトには「特定商取引法に基づく表示」ページを用意し、最新の情報を正確に掲載するようにしてください。
虚偽・誇大な宣伝の排除
広告内容は常に事実に基づき、合理的な根拠を確認した上で表示します。
実際よりも有利に見せかける誇大な表現は消費者庁のガイドライン等を参考に避け、誤認を招く表示は禁止されていることを社員にも周知し、自社の広告が誇大広告等にあたらないかは常に確認しましょう。
法改正ルールへの対応
近年の法改正にも注意が必要です。例えば2022年施行の改正特商法では、ECサイトの最終確認画面で「分量」「販売価格」「支払時期」など基本事項を表示することが義務化されました
定期購入サービスなど継続課金型の販売を行っている場合、これらの項目が購入手続き最終画面にきちんと表示されているか確認し、不足があれば早急に是正しましょう。
クーリングオフの明示と適切な対応
通信販売にはクーリングオフ制度が適用されない旨をサイト上で明記し、代わりに返品やキャンセルの条件を分かりやすく案内しておくことが大切です(例:「通信販売にはクーリングオフは適用されません。返品・解約は○日以内にご連絡いただいた場合に限り対応いたします」等)。
訪問販売や電話勧誘販売を行う場合は、契約書面への法定記載事項やクーリングオフの説明を確実に実施し、消費者に誤解を与えないようにしましょう。
万一クーリングオフに関する問い合わせがあった際にも、法律に沿った正しい対応を徹底する必要があります。
社内コンプライアンス体制の整備
特定商取引法や景品表示法など関連法令の改正情報や行政当局から公表されるガイドラインに常に目を配り、必要に応じて自社の表示や勧誘方法をアップデートしましょう。
定期的に自社サイトや広告表現を点検し、問題が見つかれば速やかに改善策を講じてください。
行政から指導や勧告を受けた場合には真摯に受け止め、従わないことで刑事事件化する事態は絶対に避けましょう。
以上のような対策を講じ、適正な広告表示と誠実な販売手続きを心がけることで、法律違反による刑事罰リスクを回避し、消費者からの信頼を高めることができるでしょう。
特定商取引法を順守した健全な通販サイト運営が、中小事業者の長期的なビジネスの発展につながります。
最後に
あいち刑事事件総合法律事務所では、普段から自社の法令遵守に関して確認しアドバイスをさせていただく顧問契約をご準備しています。また初回相談は無料で実施させていただきます。
自社の事業の法令遵守に関してご不安な事業者の方、経営者の方は是非一度あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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産業廃棄物処理業における環境犯罪リスクと違反発覚時の対応策
産業廃棄物処理業(廃棄物処理・リサイクル業界)は、法律によって厳しく規制された業界です。
不法投棄や無許可営業などの法令違反は環境犯罪となり、重大な刑事責任が問われます。
万一、社内で違法な廃棄物処理が行われていた場合、経営陣や従業員にも刑事処分が科される可能性があります。
実際に廃棄物処理法違反は積極的に刑事告発されていると言われており、事態が発覚すれば企業の存続にも関わる深刻な問題となります。
こうしたリスクに備え、法令遵守の体制を整え、違反発覚時は速やかに弁護士へ相談することが不可欠です。
事例

典型的な廃棄物処理法違反としては、不法投棄、無許可での廃棄物処理業営業(無許可営業)、不適正処理などが挙げられます。
例えば産廃処理業者が許可なく廃棄物を収集・運搬・処分をすれば5年以下の拘禁もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方(法人は3億円以下の罰金)に処せられます。
実際に、不法投棄事件では企業に5,000万円の罰金刑、関与した取締役に実刑判決が下された例もあります。
また産廃業者が自社で処理せず無許可の第三者に廃棄物を再委託し、マニフェストに虚偽記載をした事例も発覚しています。
これらの違法行為は近隣住民からの通報や行政の立入検査で明るみになるケースも多く、隠匿は困難です。
違反発覚時の初動対応と弁護士の役割
万が一、自社や社員の違法行為が発覚した場合、まず速やかに違法行為を中止し、事実関係を把握する必要があります。
同時に、警察・環境省・自治体など行政や捜査機関からの調査には適切に対応することが重要です。
行政は不法投棄等を発見すると関連企業に立入検査を行い、書類を徹底精査して他の違反も見つけようとします。
こうした調査段階では、刑事事件に精通した弁護士の助言が重要です。
早期に弁護士を付ければ、取調べ対応の適切なアドバイスを受けられ、虚偽の供述や不利益な対応を避けることに繋がります。
捜査機関への説明方法や対応方針についても弁護士と相談し、企業として誠実に協力しつつ自社の権利を守る初動対応が求められます。
法令遵守のチェック体制とその運用
日常的に法令遵守(コンプライアンス)を徹底する社内体制を構築しておくことが、リスクを未然に防ぐ鍵です。
具体的には、産廃処理業の許可証の範囲内で事業を行っているか、事業範囲の変更時には速やかに許可申請しているかを定期的に確認します。
廃棄物の収集運搬や処分を外部に委託する際は、必ず許可を持つ業者に委託し、書面による契約書と産廃マニフェストを正しく交付・保存しているかチェックする体制を整えます。
専門コンサルタントによる監査では1拠点から100件近い改善事項が見つかることもあり、企業自らは問題に気付いていないケースも少なくありません。
定期的な内部監査や点検を行い、許可手続きや契約書の整備状況、マニフェスト管理など法定事項を漏れなく確認する運用が重要です。
社員教育と内部告発への備え
従業員教育(コンプライアンス研修)の徹底は、環境犯罪リスクを防ぐ基本です。
企業自体に違反の意図がなくても、従業員の誤った判断や知識不足により違法行為が起きる可能性があります。
例えば、法律知識が不十分な社員が無許可の業者に廃棄物処理を依頼してしまったり、本来必要な契約書を作成せず口頭で進めてしまったりすると、結果的に法違反となり得ます。
社員個人が独断で違法行為を行った場合でも、両罰規定により会社も責任を問われ罰金刑を受ける可能性があります。
こうした事態を防ぐため、新入社員研修や定期研修で廃棄物処理法のルール・リスクを周知徹底し、現場でのヒヤリハット事例も共有します。
また、社内には内部通報制度(内部告発窓口)を整備し、不正の兆候を社員が安心して報告できる体制を作ります。
内部通報制度を導入すれば、企業自らが内部の不正を早期発見・対処する自浄作用が働き、コンプライアンス経営の実現につながります。
仮に社員から不正の告発があった場合は、隠蔽せず迅速に事実調査を行い、必要に応じて行政機関へ報告するとともに、再発防止策を講じることが大切です。
弁護士に相談するメリットと実務支援の内容
環境犯罪リスクに直面した際、弁護士に相談することには多くのメリットがあります。
まず刑事事件に強い弁護士であれば、捜査段階から適切な対応策をアドバイスができます。
廃棄物処理法違反で起訴・処罰を避けたい場合、検察官や裁判官に対し違反を深く反省し、更生に努める姿勢を示すことが重要ですが、弁護士はその伝え方を指導したり、代弁したりすることが考えられます。
また、違反再発を防ぐための社内環境整備(再発防止策)についても弁護士と一緒に検討できます。
さらに、企業の平時の取り組みとして、弁護士は社内コンプライアンス体制の強化支援も行うことができます。
例えば、社内規程の整備や契約書のリーガルチェック、適法な産廃処理委託契約書の作成支援なども可能です。
社員向けのコンプライアンス研修の講師を弁護士に依頼し、法律の専門家から直接指導を受けることで社員の法令理解を深めることも効果的です。
このように弁護士を活用することで、違法行為の未然防止から発覚後の危機対応まで包括的なサポートを得ることができます。
事務所紹介
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、環境犯罪を含む刑事事件を中心に扱う法律事務所です。
当事務所には刑事弁護に特化した経験豊富な弁護士が多数在籍しており、廃棄物処理法違反などの案件でも集中的かつ的確な対応が可能です。
初回の法律相談は無料で、平日夜間や土日祝日でもご予約・ご相談を受け付けています。
ご依頼があれば、弁護士が迅速に初動対応にあたり、逮捕前後を問わず捜査機関対応や釈放・不起訴に向けた活動をサポートいたします。
企業からのご相談の場合には、違反発覚時の捜査対応はもちろん、社内のコンプライアンス体制整備や再発防止策の策定、従業員研修の実施、契約書のチェック・作成など幅広い法務サービスをご提供いたします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は全国対応可能で、企業の皆様の安心と法令遵守経営を全力で支援いたします。
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宗教法人・NPO法人の不祥事対応:刑事事件発生時に弁護士へ相談する重要性
宗教法人やNPO法人の運営に携わる幹部・代表者にとって、組織の信用を揺るがす不祥事や刑事事件は決して他人事ではありません。寄付金の不正流用や幹部による詐欺、反社会的勢力の介入などの事件は各所で報道されており、ひとたび発覚すれば信者や支援者からの信頼失墜は避けられません。最悪の場合、所轄庁による調査や宗教法人格の剥奪(解散命令)に発展するリスクもあります。こうしたリスクに備え、不祥事発生時には早期に弁護士へ相談し、適切な対処策を講じることが組織存続の鍵となります。
1. 不祥事発生が宗教法人・NPO法人に与える影響
寄付者や信者の善意によって成り立つ宗教法人・NPO法人において、不祥事や刑事事件が発生すると甚大な影響が生じます。まず 社会的信用の喪失 により、寄付金や支援の減少、信者・会員離れが起こります。加えて、法的な制裁や行政処分 の可能性も高まります。例えば、教団内で刑事事件に発展する重大な不正が認められた場合、行政庁が宗教法人法に基づき調査に乗り出し、場合によっては 解散命令 を裁判所に請求することも想定されます。現に、過去にはオウム真理教事件や霊視商法の明覚寺事件で解散命令が出され、最近では刑事事件が認定されないケース(旧統一教会)にも同様の措置が検討されています。このように、不祥事が発覚した際の影響は組織の存続に関わる深刻なものとなるため、迅速かつ適切な対応が不可欠です。
2. 事例

過去に宗教法人やNPO法人で問題となった典型的な不祥事の例をいくつか挙げます。
- 不透明な資金流用: 組織の資金が本来の宗教活動や公益活動に使われず、幹部の私的流用に充てられるケース。例えば信者からの寄付金やお布施が代表者個人の生活費に充当されていた事例があります。
- 寄付金の不正利用: 名目と異なる用途に寄付金を使う、または架空の募金活動で集めた資金を裏金化するケース。会計担当者による組織資金の横領事件も各地で発生しています。
- 宗教法人格の悪用(マネーロンダリング・脱税): 宗教法人は非課税措置など特別な優遇を受けるため、その法人格が犯罪収益の洗浄や脱税に悪用される事件が後を絶ちません。実際に暴力団が休眠状態の宗教法人を買収し、犯罪収益を流す手段として利用した例も報告されています。また、海外の不正資金を国内宗教法人を通じて移動させるマネーロンダリング手法も確認されています。
- 幹部による詐欺事件(高額な祓い料詐取など): カルト的手法で高額な祈祷料や除霊料を信者に支払わせ、実態のない「救済」を装って金銭をだまし取る事件。こうした詐欺的商法は刑事事件となりうるばかりか、被害者の告発次第で組織全体の信用問題に発展します。
- 会計不正: 帳簿の改ざんや二重帳簿の作成、収支報告の虚偽記載などにより、組織の財務状況を不透明にする行為。内部牽制や監査体制が弱い団体では不正を見逃しやすく、不祥事の温床となります。
- 反社会的勢力の介入・ダミー宗教法人の利用: 暴力団などが宗教法人やNPO法人を隠れ蓑に使い、不正な活動や資金洗浄を行うケース。架空の信者名簿で設立認証を受けたと疑われる宗教法人がヤミ金融業を営んで摘発された事件もあります。こうしたケースでは組織自体が犯罪インフラと見なされ、厳しい処分の対象となりえます。
- セクハラ・パワハラ等のスキャンダル隠蔽: 教団内での性的嫌がらせや権力乱用といったハラスメント問題を内部で揉み消そうとした結果、被害者の告発により対外的な大事件に発展することがあります。近年、宗教界でもセクハラ・パワハラの訴訟が相次いでおり、ある宗教法人では資金不正の問題に加えて性被害訴訟やパワハラ問題が同時発生する例も報告されています。不祥事を隠蔽しようとすれば一層世間の批判を招き、組織の存続が危ぶまれる結果となります。
3. 弁護士に相談することの重要性
上述のような問題が発覚した際、速やかに弁護士へ相談することは極めて重要 です。その理由は大きく分けて二つあります。
第一に、法的に的確な初動対応を取るためです。不正や犯罪の疑いが出た場合、証拠保全や被害拡大防止、関係者への聞き取りなど初期対応を誤れば後の責任追及や再発防止策に支障が出ます。弁護士であれば客観的な立場から法律に則った適切なアドバイスが可能であり、早期に相談することで事態の悪化を防げます。
第二に、外部への説明責任と信用回復という観点です。不祥事対応では、被害者や信者への謝罪・補償、所轄官庁や捜査機関への報告など様々な場面で専門知識が求められます。弁護士に相談しながら進めることで法令に沿った誠実な対応が担保され、組織の透明性を示すことができます。特に宗教法人やNPO法人に詳しい弁護士であれば、宗教法人法や特定非営利活動促進法(NPO法)等の規制に精通しており、事態収拾と再発防止に向けた総合的な支援が受けられるでしょう。
4. 内部調査と是正措置の立案
不祥事が起きた際には、まず 内部調査 を徹底して行い事実関係を明らかにする必要があります。弁護士はこの内部調査の過程で中立的な調査者として関与し、調査の精度や信憑性を高めるうえで大いに役立ちます。例えば資金流用事件であれば、弁護士が関連資料の精査や関係者ヒアリングを主導し、不正の全容解明と証拠の確保を行います。
また、セクハラ問題などデリケートな事案では、被害申告者・加害者双方から適正に事実を聴取し、公平な判断を下すためにも弁護士の同席や助言が有効です。調査結果が判明した後は、是正措置(改善策)の立案に移ります。不正があった場合の責任者の処分、被害者への補償、組織のガバナンス改革など、再発防止と信頼回復のための具体策を弁護士とともに検討します。
法令に違反する行為があれば然るべき届出や是正報告を行政機関へ行う必要がありますし、場合によっては被害者との示談交渉や刑事告発の判断も迫られます。これら一連の対応を専門家の助言なしに適切に進めることは難しく、弁護士の関与が組織防衛の要となります。
5. 法令順守体制の強化と会計透明性の確保

宗教法人法やNPO法といった関係法令の順守は、平時から整備しておくべき組織運営の基本です。不祥事を機に組織のコンプライアンス体制を見直すことも重要でしょう。弁護士はこれら特殊法人に関する法律やガイドラインを踏まえ、規程類の整備や役員の法的責任範囲の確認など法令順守体制強化をサポートします。
また、多くの宗教法人では法律上、営利企業のような厳格な監査義務がないため、内部牽制が働きにくい面があります。弁護士や公認会計士と連携し会計の透明性を確保する仕組みづくり(複数人による出納チェック、定期的な外部監査導入など)を講じれば、不正の抑止効果が高まります。実際、内部統制が不十分で「性善説」に頼った運営では不正の温床になりやすいことが指摘されており、健全な内部牽制は関係者自身を守る手段でもあります。弁護士の助言のもと、法律に沿った適正な会計管理と情報開示を徹底することで、信者・支援者からの信頼回復につなげることができます。
6. ハラスメント対策と当局調査への対応
昨今、宗教法人や公益法人におけるハラスメント問題も社会的に大きな関心を集めています。教団内部でセクハラ・パワハラが発生した場合、その対応を誤ると深刻なスキャンダルに発展しかねません。弁護士はハラスメントの防止規程策定や相談窓口の設置運営について助言し、万一問題が起きた場合には第三者調査委員会の設置など適切な対処をサポートします。
被害者対応においてはプライバシー保護や人権尊重の観点が不可欠であり、法律の専門家による慎重な進行管理が望まれます。内部での隠蔽は禁物であり、弁護士の関与のもと事実関係を公正に調査し再発防止策を講じることが、ひいては組織の名誉を守ることにつながるでしょう。
さらに、不祥事の程度によっては 所轄庁や捜査当局から調査を受ける局面 も考えられます。宗教法人の場合、文化庁や都道府県からの「質問権」に基づく調査や、悪質な違法行為に対する解散命令請求が現実に起こりえます。こうした当局対応に際しても、弁護士のサポートは不可欠です。当局への報告書作成やヒアリングへの同席、提出書類の精査など、法令に沿った適切な手続きを踏むことで、最悪の事態(法人格剥奪や刑事処分)を回避できる可能性があります。行政との交渉や是正計画の提出も、専門知識なしでは太刀打ちできません。弁護士とともに誠意ある対応策を講じることで、当局からの信頼を得て事態の沈静化を図ることが重要です。
7. 事務所紹介
当事務所では、宗教法人やNPO法人における不祥事対応やコンプライアンス支援に豊富な実績を有する弁護士チームが皆様の相談を承っております。内部調査の実施から是正措置の立案、宗教法人法・NPO法に基づく法令順守体制の整備、さらにはハラスメント防止策の導入支援や所轄庁対応まで、ワンストップで専門的なリーガルサービスをご提供可能です。組織の理念と社会的信用を守るためには、問題が起きてからの対応はもちろん、平時からの予防法務も欠かせません。当事務所の弁護士は顧問契約による継続的なサポートにも対応しており、日常的なご相談から緊急時の対応まで伴走いたします。宗教法人・NPO法人特有の事情に精通した専門家の力をぜひお役立てください。不祥事や刑事事件への適切な対応にお困りの際は、どうぞお気軽に当事務所へご相談ください。
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インボイス制度導入後の価格交渉と下請法リスク:公取委の監視強化に備える
インボイス制度開始後,価格交渉の現場では公正な転嫁が課題となり,公正取引委員会(公取委)が監視を強化しています。
中小企業にとって新制度下での不当な取引慣行は法的リスクを伴うため,十分な注意と対応策が必要です。
本稿ではインボイス制度の導入と下請法の関係について解説をします。
1. インボイス制度と価格転嫁問題の関係
令和5年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は,消費税の仕入税額控除に適格請求書の保存が必要となる新ルールです。
これにより,従来免税事業者だった小規模事業者が課税事業者となるか否かで取引条件(特に価格)に影響が生じ,取引先との価格交渉が発生するケースが増えました。例えば,仕入先がインボイス未登録のまま取引を続ける場合,買い手企業は仕入税額控除が制限されるため,その分のコスト負担の振り分けが問題になりえます。
インボイス制度を理由に一方的に価格据え置きや値引きを強要すれば,優越的地位の濫用として独占禁止法や下請法上問題となる可能性があります。
適正な価格転嫁が行われない取引慣行は,中小事業者に不当な不利益を与える行為として法的リスクをはらむことに留意すべきです。
2. モデル事例(インボイスを理由にした価格据置・値下げが下請法違反となるケース)
インボイス制度への対応を巡り,中小企業庁は親事業者(発注側)が下請事業者に対して不当な価格条件を押し付けた具体的な事例を例示しています。
例えば,継続取引中の免税事業者であった下請が課税事業者(インボイス発行事業者)に転換したにもかかわらず,発注側が次回以降の単価引上げ交渉に一切応じず従来価格に据え置くというケースについて,中小企業庁は,下請法第4条第1項第5号が禁じる「買いたたき」に該当し得ると指摘しています。
また,取引完了後の請求段階で下請事業者がインボイス未登録(免税事業者)と判明した途端,あらかじめ合意していた消費税相当額の支払いを一方的に差し引いたケースでは,下請法第4条第1項第3号が禁じる「下請代金の減額」に当たる違法行為になると指摘しています。
公取委は令和5年5月,注意事例を公表し,このようなインボイスを理由とした不当な価格据置・値下げを行っていた発注事業者に対し注意を行ったと公表しており,実際にイラスト制作や農産品販売,人材派遣,電子出版など複数の業種で問題行為が発覚している。
3. 下請法における「優越的地位の濫用」とは
「優越的地位の濫用」とは,取引上の立場が相手より優位な事業者が,その地位を利用して相手方に通常の商慣習に照らし不当に不利益を与える行為を指します。
独占禁止法でこのような「優越的地位の乱用」は不公正な取引方法の一類型として禁止されており,大企業が取引先の中小企業に対し一方的な要求を押し付ける行為が該当します。
下請取引の場面ではこうした行為が起こりやすいため,独占禁止法を補完する形で「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)が定められ,親事業者による”下請いじめ”を防止すべく細かく規制しています。
具体的には,下請法により親事業者による受領拒否,代金支払遅延・拒否,代金の減額,返品の強要,購入強制,不当な役務提供強要などが禁止されており,違反すれば公取委からの是正勧告や公表等の措置を受ける可能性があります。
インボイス制度を理由とした前記のような価格据置・値下げの強要は,優越的地位の濫用として独占禁止法違反となり得るだけでなく,取引関係によっては下請法違反(下請代金の減額や買いたたき等)として直接規制される点に注意が必要でしょう。
4. 公正取引委員会の方針と最近の監視事例
公取委は中小事業者への不当な価格押し付けを防止するため,インボイス制度導入に関連する取引実態の監視を強化している。
令和4年に関係省庁と公表したインボイスQ&Aでは,免税事業者に対し「課税事業者にならなければ取引価格を下げる」「応じなければ取引打ち切り」と一方的に通告する行為が独占禁止法・下請法上問題になり得ると明示しています。
その後も公取委は相談窓口への情報をもとに調査を進め,令和5年5月にはインボイス制度開始を目前にして優越的地位の濫用につながるおそれのある事案として約10社に「注意」を発出したことを明らかにしています。注意を受けたのはイラストレーターや漫画家,農家,ハンドメイド作家,通訳者など免税事業者(いずれも小規模の事業主であると思われます)と取引のある発注事業者で,前述のように「免税のままなら消費税分を差し引く」と通告する不当な行為が確認されています。
さらに,公取委は違反行為の未然防止に向けた情報収集にも積極的であり,令和5年には発注側・受注側計11万事業者に書面調査を行いインボイス制度関連の質問項目を設けるなど,問題となり得る行為の把握に努めています。
こうした監視の結果,公取委はインボイス制度開始後の優越的地位濫用につながる恐れのある事案に対して迅速に対処していますから,企業側としては「見られている」という意識を持って取引に臨む必要があるでしょう。
5. インボイス制度下で企業に求められる価格交渉の実務対応
新たなインボイス制度の下では,発注側企業は下請事業者との価格交渉において一層公正な対応が求められます。仕入先が免税事業者の場合,まずはインボイス発行事業者への転換を要請すること自体は問題ありませんが,その際に「登録しなければ消費税分は支払わない」「取引をやめる」といった一方的な通告を行うことは厳に慎むべきです。
実際に下請事業者が課税事業者となった場合には,消費税の納税義務が新たに生じる点を踏まえ,従来価格にその分を反映させるべく誠実に交渉する必要があります。
課税転換に応じさせておきながら,明示的な協議もなく以前と同じ単価で発注し続けるような行為は,買手側の都合で下請に過度な負担を強いるものであり優越的地位の濫用に該当し得ます。
反対に,消費税の取り扱いによるコスト増加分について発注者・受注者双方で十分話し合い,免税事業者側の負担も考慮した上で合意の上で価格設定を行えば,結果的に価格を調整したとしても独占禁止法上問題とはなりません。
ポイントは形式的でない実質的な協議を行うことであり,インボイス制度に伴う消費税分の転嫁については「双方納得の上」で価格を決定する姿勢が肝要です。
6. 法務部門・経営者がとるべき社内体制整備と通報対応
企業の法務担当者や経営層は,インボイス制度施行に伴う下請法リスクに対処するため社内体制の整備を急ぐべきです。まず,調達・営業担当者に対する研修を実施し,インボイス制度下での独禁法・下請法の留意点を周知徹底することが重要です。
自社が「優越的地位」にある取引では,消費税転嫁のルールと禁止行為(減額や買いたたき等)を社内ガイドラインに明文化し,現場が迷わず適切な交渉を行えるようにしておく必要があります。
あわせて,契約書や発注書のひな型を見直し,消費税額の取扱いを明確に規定するとともに,一方的な不利変更が行われないチェック体制を構築することも望ましいです。
さらに,社内外からの通報や相談に迅速に対応できる窓口を整備します。社内の通報制度(内部通報制度)を充実させ,従業員が取引上の不適切な要求に気づいた際に報告しやすい環境を作ることがリスクの早期発見につながります。
実際,公取委にはインボイス制度に関連した相談が既に増加傾向にあり,国税庁は令和5年7月末時点で約2000件もの相談が寄せられていると報じています。
取引先の下請事業者から直接,公取委や中小企業庁に情報提供がなされる可能性も高まっているため,自社内の問題は外部通報される前に自主的に発見し是正する姿勢が求められています。
万が一違反が疑われる事案が発生した場合には,速やかに事実関係を調査して被害を回復し,必要に応じて公取委への報告や是正措置を講じることに努めましょう。事後の対応によっては行政からの勧告・措置を回避または軽減できる可能性があります。
7.お困りの方はご相談ください
インボイス制度施行後の価格交渉トラブルや下請法違反リスクへの対応についてお困りの際は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
当事務所は中小企業の法律リスク対策に精通した弁護士チームを有しており,インボイス制度に絡む独占禁止法・下請法の問題についても適切なアドバイスと実務対応を提供いたします。具体的には,取引契約の事前チェックによるリスク予防策の立案,社内コンプライアンス体制整備の支援,そして万一トラブルが発生した場合の公取委対応や被害最小化の交渉など,幅広いサポートが可能です。
特に下請法分野では,行政手続や是正措置への対応経験も豊富に有しており,クライアント企業の立場で迅速かつ適切な解決を図ります。
インボイス制度対応に伴う価格交渉上の不安や疑問がございましたら,ぜひ当事務所までお気軽にお問い合わせいただき,法務のプロの力をお役立てください。
生成AI悪用による企業の刑事リスクと対応策を法務視点で解説
生成AIは画像や文章を巧妙に作り出せるため、各種書類の偽造に悪用される恐れがあります。例えば、画像生成AIを使えば運転免許証やマイナンバーカード等の本人確認書類の精巧な偽造が可能と指摘されており、それによってオンライン契約時の本人確認をすり抜けるケースが懸念されています。実際に2025年には、中高生が違法入手したID情報をもとにChatGPTでログインプログラムを作成し、他人名義で携帯回線を契約して転売する不正が発覚しました。
生成AI悪用し楽天モバイルに不正アクセス、1000件以上の回線入手し転売か…容疑で中高生3人逮捕 : 読売新聞
この事件でも「AI生成の偽造身分証で本人確認を突破した可能性」が報じられており、生成AIが犯罪の手口に利用された一例と言えます。また、社内不正の場面でも、従業員がAIで架空の請求書や会計データを作成して経費を詐取するといった内部犯罪も起こり得ます。
AIを利用した事件に対して成立しうる犯罪
こうした行為は明確に刑法犯罪に該当します。契約や取引で他人をだます行為は詐欺罪(刑法246条)となり得ますし、公的な身分証や社印付き文書を偽造すれば公文書偽造罪・私文書偽造罪などの重い罪に問われます。電子データの改ざんによる不正取得は電子計算機使用詐欺罪が適用される場合もあります。不正な書類で契約を結べば取引先にも損害を与え、企業として信用失墜は避けられません。特に金融・証券分野ではAIを用いた巧妙な詐欺が今後増えるとの予測もあり、欧州では2027年までにAI詐欺による被害額が数百億ドルに達する可能性が指摘されています。
どのように防止するか?実務での対応策
不正な書類やデータの偽造を防ぐために、企業法務・コンプライアンス部門は以下のような対応策を講じる必要があります。
- 本人確認プロセスの強化: オンライン上の顧客確認(eKYC)ではAI偽造に備えた追加確認を導入します。提出書類の真正性をチェックするソフトの活用や、必要に応じて対面確認や電話での二段階認証を併用し、画像データだけで承認しない体制を整備するべきです。
- 社内承認フローの厳格化: 経費精算や支払手続において、一人の担当者だけで完結させず複数人・部署でのダブルチェックを制度化します。AI生成の巧妙な偽造請求書であっても、人の目による確認や不正検知システムの導入で発見できる仕組みにします。
- ログ管理と証拠保全: 社内で生成AIを使って作成した文書等のログを可能な範囲で記録・保存し、不審な出力物の出所を追跡できるようにします。万一、不正が疑われる場合は速やかにログを解析し、関与者の特定と証拠保全を行えるように備えましょう。
- 早期の法的対応: 社内の調査で犯罪行為が判明した場合、隠蔽せず直ちに法務部主導で必要な措置を取ります。加害社員への懲戒処分はもちろん、被害が社外に及ぶ場合は被害者への連絡と謝罪、そして警察への被害届提出を検討します。企業自らが犯罪の舞台とならないよう、毅然とした姿勢で臨むことが重要です。
実務上のポイント
社内規程で「生成AIの利用禁止事項(ガイドライン)」を定め、他人の個人情報や他社機密を無断で入力・生成しないこと、違法行為に繋がり得る用途は禁止する旨を明記しましょう。
また、経理・財務部門に対してはAIによる不正の兆候(不自然な文書様式や不審なファイル名など)に注意を払うよう教育します。万一、取引先から受領した書類に疑義が生じた場合も、安易に受け入れず真偽を確認する慎重さが求められます。企業風土として誠実性を重視し、不正を見逃さない内部統制が最大の防御策となります。
ChatGPT悪用による脅迫・ブラックメール
文章生成AIを使えば、巧みに人を脅す脅迫文やブラックメール(恐喝目的のメール)を大量に作成することも容易です。従来、犯罪者の送る脅迫メールは文面に不自然さがあり発覚しやすい側面もありました。しかし生成AIの文章は文法的に洗練されており、あたかも本物のビジネス文書のような体裁で恐怖を与える内容を作り出せます。例えば「社内の秘密を握った。公表されたくなければ金銭を支払え」といったメールが役員宛に送りつけられた場合、そこに実在しない情報であってもAIがもっともらしく細部を創作するため、受け手は真偽を判断しづらくなります。
また近年では、AIで生成した偽の裸画像をネタに個人を脅迫するケースも海外で問題化しています。ディープフェイクと呼ばれることもあります。実際アメリカ・カリフォルニア州では、AIが作った偽のヌード画像を生成したり拡散したりする行為を禁じる法律が2024年に成立しました。このようにディープフェイクを用いた新手の恐喝も登場しており、企業やその従業員が標的となる恐れがあります。
想定される法的リスク
他人を脅して金品を要求すれば恐喝罪(刑法249条)に該当し、害を加える趣旨のメールを送ればたとえ要求がなくとも脅迫罪(刑法222条)に問われます。生成AIの活用によって犯行が巧妙化・大量化すると、企業の経営陣や従業員に対するリスクは無視できません。特に役員クラスは個人情報や資産情報が公開されている場合も多く、犯罪者に狙われやすい傾向があります。海外では「役員への脅迫」がディープフェイク悪用の一形態として報告されており、日本企業にとっても無関係でいられません。
被害に遭うだけでなく,万一、社員が業務中にAIを使って取引先を脅すような行為を行った場合、その社員個人が刑事責任を負うのはもちろん、企業も監督責任を問われ社会的信用を失うリスクがあります。
実務上の対応策
脅迫・恐喝への対策として、企業は被害防止と事件発生時の適切対応の両面から準備しておきます。
- 社内外への注意喚起: 社員に対し、AI由来と思われる不審な脅迫メールやSNSメッセージを受け取った場合の対応を周知します。具体的には「連絡を安易に信用しない」「身代金要求に応じない」「すぐ上司や法務部に報告する」ことを徹底させます。取引先や顧客にも、当社社員を名乗る不審メール等があれば真偽確認してもらえるよう事前にアナウンスするなど、情報共有体制を築きます。
- 緊急時の対応フロー策定: 脅迫事案が発生した場合に備え、社内の危機管理フローを決めておきます。法務・コンプライアンス部門を中心に、広報やITセキュリティ部門とも連携した対応チームを編成し、初動対応手順(証拠保全、警察への通報、取引先への説明など)をマニュアル化します。
- 法執行機関との連携: 悪質な恐喝を受けた際は企業判断で内々に処理しようとせず、速やかに警察に相談します。昨今,サイバー犯罪に対して,各都道府県警も特別捜査室を設置していることが多く、専門部署がディープフェイク画像の解析や犯人特定を支援してくれます。被害届の提出にあたっては必要に応じ顧問弁護士の助言を仰ぎ、刑事告訴も視野に入れた法的措置を検討します。
- メールフィルタリング強化: 技術的対策として、脅迫や詐欺の兆候があるメールを自動検知するフィルタを導入します。「送金要求」「機密漏洩」等のキーワードをトリガーに管理部門へアラートが飛ぶ仕組みを設けることで、社員個別の判断に頼らず組織として怪しい連絡を察知できます。
実務上のポイント
脅迫への対応で最も重要なのは「冷静さ」と「報告体制」です。
脅し文句に動揺して単独判断で金銭を支払ってしまうと、さらなる要求をエスカレートさせる危険があります。社員には「脅迫メールは決して一人で抱え込まず、必ず上長や法務に共有する」文化を根付かせましょう。また万一フェイク情報を拡散するとの予告があった場合に備え、広報部門と協力して公式声明を速やかに出せる準備も欠かせません。被害を未然に防ぐだけでなく、発生後の被害拡大を最小限に抑える危機管理体制を平時から構築しておくことが肝要です。
ディープフェイク悪用による風評・業務被害
画像や音声を自由自在に操るディープフェイク技術も、企業に新たな脅威をもたらしています。AIが作り出す偽の映像・音声によって、企業や経営者になりすましたり虚偽情報を流布したりする手口です。海外では既に、Zoom会議上でAI生成の架空役員が社員を騙し、極秘資金の送金を指示するといった巧妙な詐欺事件が発生しました。この事件では多国籍企業が約37億円もの被害を受けており、AI偽装と社内手続の盲点を突いた犯行として注目されています。また別の事例では、イギリス企業のCEOが上司になりすましたAI音声に騙され約24万ドルを送金してしまいました。これらは典型的な詐欺型の被害ですが、ディープフェイクはさらに企業の信用失墜を狙った虚偽風評の拡散にも使われかねません。たとえば競合他社が当社の製品不良を捏造した動画をネットに流したり、経営トップの不適切発言を偽造音声ででっち上げたりすれば、瞬く間に株価下落や顧客離れを招くでしょう。事実、AIによる情報操作で株式市場に影響を与えるリスクは多く指摘されており、日本国内でも十分起こり得るシナリオです。
こうした場合、企業は業務妨害罪(刑法233条・234条)や名誉毀損罪(刑法230条)などで加害者を刑事告訴できる可能性がありますが、一度流布したデマを完全に回収することは難しく、被害の深刻さは計り知れません。
想定される法的リスク
ディープフェイクによる攻撃は,いくつものリスクを抱えます。社内手続の不備を突かれれば前述のように巨額の金銭被害(詐欺罪)が生じますし、虚偽情報の拡散によって取引先や消費者からの信用を失えば営業上の損失は甚大です。
不当なデマ拡散は刑事上も信用毀損罪・業務妨害罪(刑法233条・234条)が成立し得る違法行為ですが、犯人を突き止めて刑事責任を問うまでに時間がかかるのが実情です。また、ディープフェイク生成物そのものについて,日本の現行法では明確な規制がなく(※2025年7月時点)、被害を受けても直ちに削除や差し止めを強制できない可能性があり,既存の法的枠組みを活用するしかありません。
企業法務としては、「攻撃を事前に防ぐこと」と「万一被害に遭った後の被害拡大抑止」の両面で迅速に対応することが求められます。
実務上の対応策
ディープフェイク起因の被害を防止・軽減するため、以下の対策を講じましょう。
- 重要プロセスの多要素確認: 社内で金銭振込や機密情報開示など重大なプロセスを実行する際、複数の確認手段を組み合わせるルールを設定します。例えば経営幹部からの支払指示はメールや音声だけでなく、必ず直接対面もしくは電話で再確認する運用とします(なりすまし詐欺の防止)。実際、一部企業では敢えてITに頼らず人間の対話を重視したアナログの確認方法(例:二要素認証の徹底)を導入し、ディープフェイク詐欺への備えをしています。
- 風評被害へのモニタリング: SNSや動画サイト等で自社に関する不審な情報拡散がないか、日頃からモニタリングを行う体制を整えます。自社名や経営者名を定期的にエゴサーチしたり、専用の監視サービスを利用したりして、早期にフェイク情報を発見することが重要です。万一、虚偽の投稿を確認した場合は速やかに証拠を保存しつつ、プラットフォーム運営会社へ通報して削除要請を行います。
- 法的措置と広報対応の準備: 悪質なデマ拡散やなりすまし被害が発生した場合に備え、平時から顧問弁護士と協議して刑事告訴や民事差止請求の方針を決めておきます。被害発生時には所轄警察や専門機関と連携しつつ、必要なら発信者情報開示請求など法的手段も駆使して早期解決を図ります。同時に、広報部門が中心となり事実無根である旨の公式声明を迅速に公表し、取引先や顧客の不安を和らげることも大切です。
- 従業員教育と情報共有: ディープフェイク映像や音声に社員が騙されないよう、定期的にセキュリティ教育を行います。巧妙な偽動画の実例を見せ、どんな点で違和感に気づけるか討議するといった訓練も有効です。また万一社内で不審な指示や情報を受け取った場合にすぐ相談し合えるよう、部署横断の連絡網を普段から機能させておきます。
実務上のポイント
ディープフェイク被害は一度起これば甚大ですが、「発生を前提」とした危機対応力を養うことが重要です。技術的検知が追いつかない現状では、人間の注意力と組織的対応が最後の砦となります。社内ルールで「高額送金の指示は必ず複数人確認」「重要発表は広報を通じて行う(社員個人のSNS発信は禁止)」などと定め、フェイク情報に乗じた混乱を未然に防ぎましょう。また、取引先や顧客にも平時から「万が一当社関係者の怪しい情報を見聞きしたらお知らせください」と伝えておけば、社外からの早期通報に繋がる可能性があります。社内外で協力し、不審な情報はまず疑って確認する風土を作ることが最大の防御策となります。
おわりに
生成AIの発展は企業活動に多大な恩恵をもたらす一方、その悪用による犯罪リスクも現実のものとなりつつあります。書類偽造による詐欺、巧妙化する脅迫・恐喝、ディープフェイクによる業務妨害――これらは従来別個のリスクでしたが、生成AIという強力なツールによって誰もが手軽に実行できる時代になりました。企業の法務担当者は、自社がそうした新手の犯罪被害に遭う可能性を常に念頭に置き、社内規程の整備や従業員教育、そして事件発生時の対応フロー策定に取り組む必要があります。幸い、日本でも警察や関係省庁がAI悪用犯罪への対策を強化し始めており、また有識者によるガイドライン策定も進んでいます。企業としても顧問弁護士等と連携し最新動向をキャッチアップしながら、技術と法制度の両面から「備えあれば憂いなし」の体制を築きましょう。生成AIを“有用な道具”として安全に使いこなすために、法務の果たすべき役割は今後ますます重要になると言えます。
生成AIに関連する法整備やガイドラインについては日々アップデートが行われているため、企業法務担当者の方は最新情報をウォッチしつつ、自社の実情に即した対策を講じてください。本記事が、皆様の企業におけるリスク管理と安全なAI利活用の一助になれば幸いです。
スニーカー販売をするために必要になる許可①

【事例】
Aさんは、福井県敦賀市に住む会社員ですが、大学生の頃からの趣味でスニーカーの蒐集をしていました。
ただ、結婚を機に蒐集していたスニーカーを手放そうと考えて、オークションサイトやフリーマーケットアプリで売却をしたところ、思ったよりも高値で売却することができました。
その経験をきっかけに、Aさんは、会社員の傍ら、副業としてスニーカーの転売をしようと考えました。
Aさんとしては、オークションサイトやフリーマーケットアプリ、中古販売店などから、相場よりも安く希少なスニーカーを見つけてきて購入し、オークションサイトで転売しようと考えています。
また、事業が軌道に乗れば会社を作って転売をしていこうとも考えています。
しかし、Aさんは、初めて副業をすることから、許可など法律的に必要になる手続きがあるのか不安になりました。
もしも許可などの必要な手続きを怠った場合、本業の方にも影響があるのではないかと心配で、あいち刑事事件総合法律事務所に相談することにしました。
(事例はフィクションです。)
1 はじめに
ある事業を行うときには、法律によって様々な規制を受けることになります。
そのような規制のうち大きなものでいえば、その事業を行うには許可を受けなければならないというものや、その事業を行うという届出をしておかなければならないというものもあります。
今回のAさんのように、中古品の転売をするという事業も、このような規制を受ける事業の1つです。
具体的には、古物営業法という法律の規制を受けることになります。
これは、会社(法人)として行う場合であっても、個人として行う場合であっても変わりません。
2 「古物」とは
そもそも古物営業法が規定している古物とはどのようなものでしょうか。
古物営業法によると「古物」とは、「一度使用された物品(鑑賞的美術品及び商品券、乗車券、郵便切手その他政令で定めるこれらに類する証票その他の物を含み、大型機械類(船舶、航空機、工作機械その他これらに類する物をいう。)で政令で定めるものを除く。以下同じ。)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」とされています(古物営業法2条1項)。
つまり、①「一度使用された物品」、②「使用されない物品で使用のために取引されたもの」、③「これらの物品に幾分の手入れをしたもの」の3つに分けることができます。
ポイントは、「古物」に当たるのは、いわゆる中古品、リサイクル品(①)だけではないということです。
壊れたものを修理して売る場合(③)はもちろん、新品を購入して転売する場合(②)でも、その売る物は「古物」に当たることになるのです。
今回は、古物営業法の許可を解説するにあたり、規制を受ける対象のうち、「古物」について解説していきました。
このような規定からすると、Aさんが売ろうとしているスニーカーが、履いたことのあるものであっても、一度も履いたことのないスニーカーであっても、古物営業法の規制を受ける可能性がありそうですよね。
ただ、古物営業法は、「古物」に関する取引の全てを許可が必要なものとして規制しているわけではありません。
規制の対象としている取引を限定しています。
3 「古物営業」とは
古物営業法は、「古物営業」のうちで一定のものを営もうとする場合は、都道府県の公安委員会で許可を受けなければならないと定めています(古物営業法3条)。
それでは、「古物営業」とはどのようなものでしょうか。
「古物営業」としては、次の3つが規定されています。
①「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」(古物営業法2条2項1号)
②古物市場(古物商間の古物の売買又は交換のための市場)を経営する営業(同2号)
③古物競りあっせん業(古物の売買をしようとする者のあっせんを一定の競りの方法により行う営業)(同3号)
このうち、①か②の営業を営もうとする場合には、古物営業の許可を受けなければなりません(古物営業法3条)。
Aさんが営もうとしている事業は、②古物市場を経営する営業(古物営業法2条2項2号)ではなく、スニーカーの転売に関する事業です。
そのため、Aさんが営む事業が、①「古物を売買し、若しくは交換し、又は委託を受けて売買し、若しくは交換する営業であつて、古物を売却すること又は自己が売却した物品を当該売却の相手方から買い受けることのみを行うもの以外のもの」(古物営業法2条2項1号)に該当するとなれば、Aさんは古物営業の許可を受ける必要が出てきます。
結論から先に言うと、Aさんの行おうとしている取引を例にとっても、その全てが古物営業の許可が必要な取引ではありませんが、一部、許可が必要な取引が含まれる可能性があります。
そのため、Aさんの場合でも、古物営業の許可を受けておく必要が出てきえます。
その具体的な内容については、次回以降の記事で解説していきます。
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