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1 はじめに
事業の規模を大きくしようと思えば、必然的に資金が必要になります。
しかし、資金を集めるとしても、その方法が無制限に許容されているわけではなく、一般大衆を保護する目的で規制が加えられています。
また、一方で資金の貸し手に目を向けたときに、借り手が弱い立場であることに付け込んで、暴利をむさぼったり、媒介に高額の手数料を取得したりする行為も規制が必要になります。
そして、多くの企業では金融機関から資金を借りて事業を行っていると思いますが、そのような金融機関の財政基盤が揺らいでしまうと、預金者に害が及びかねませんし、ゆくゆくは金融機関に頼った資金繰りもできなくなってしまいます。
そこで、このような問題に対応するために、「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」(いわゆる「出資法」)が定められており、違反には罰則も定められています。
ここでは出資法の規制の内容と罰則を見ていきます。
2 出資金の受入れの制限
「不特定且つ多数の者に対し、後日出資の払いもどしとして出資金の全額若しくはこれをこえる金額に相当する金銭を支払うべき旨を明示し、又は暗黙のうちに示して、出資金の受入をしてはならない」と定められています(出資法1条)。
この規定に違反すると、3年以下の懲役か300万円以下の罰金、またはその両方が科されます(出資法8条3項1号)。
また、行為者が罰せられるだけではなく、法人も、300万円以下の罰金が科されます(出資法9条1項3号)。
3 預り金の禁止
他の法律によって認められている場合を除き、「何人も業として預り金をしてはならない」とされています(出資法2条1項)。
この「預り金」とは、「不特定かつ多数の者からの金銭の受入れで」、かつ、「預金、貯金又は定期積金の受入れ」か、どのような名称であっても、それらと「同様の経済的性質を有するもの」をいいます(出資法2条2項)。
この規定に違反すると、3年以下の懲役か300万円以下の罰金、またはその両方が科されます(出資法8条3項1号)。
また、行為者が罰せられるだけではなく、法人も、300万円以下の罰金が科されます(出資法9条1項3号)。
4 浮貸し等の禁止
また、金融機関の「役員、職員その他の従業者」が、自身の地位を利用して、「自己又は当該金融機関以外の第三者の利益を図るため、金銭の貸付け、金銭の貸借の媒介又は債務の保証」をすることも禁止されています(出資法3条)。
この規定に違反すると、3年以下の懲役か300万円以下の罰金、またはその両方が科されます(出資法8条3項1号)。
ただし、出資金の受入れの制限や預り金の禁止とは異なり、浮貸し等の禁止については、法人は処罰されません(出資法9条1項3号かっこ書き)。
5 高金利・高保証料の禁止
⑴ 高金利の禁止
まず、金銭の貸付けを行う者が、年109.5パーセントを超える割合(うるう年については109.8パーセント、1日あたり0.3パーセント)による利息の契約をした場合、5年以下の懲役か1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます(出資法5条1項)。
この場合、行為者が罰せられるだけでなく、法人も3000万円以下の罰金が科されます(出資法9条1項1号)。
また、このような利息の契約をして金銭の貸付けを行った者が、業として金銭の貸付けを行う場合、10年以下の懲役か3000万円以下の罰金、またはその両方が科されます(出資法5条3項)。
この場合も、行為者が罰せられるだけでなく、法人も1億円以下の罰金が科されます(出資法9条1項2号)。
さらに、業として金銭の貸付けを行う場合は、年20パーセントを超える割合による利息の契約をした場合、5年以下の懲役か1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます(出資法5条2項)。
この場合も、行為者が罰せられるだけでなく、法人も3000万円以下の罰金が科されます(出資法9条1項1号)。
なお、業として金銭の貸付けを行うといっても、貸金業者として貸金業法で登録された者には限定されません。
⑵ 高保証料の禁止
上記⑴の高金利の禁止規制があったとしても、貸主が適法な上限ギリギリの金利で貸し付けても、その一方で借主に貸主の関係者を保証人とする契約を締結させて保証料を徴収するなどされてしまえば、高金利の規制が意味をなさなくなってしまいます。
そこで、貸付けを業として行う者の貸付けの利息と、貸付けの保証を業として行う者の保証料との合計が、貸付けの金額の20パーセントを超える場合、5年以下の懲役か1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます(出資法5条の2第1項)。
この場合、行為者が罰せられるだけでなく、法人も3000万円以下の罰金が科されます(出資法9条1項1号)。
6 最後に
以上のとおり、出資の受入れや金利については多数の規制があり、違反した場合には刑罰が定められています。