会社の従業員や役員が逮捕された場合として、
- 会社とは関係のない犯罪で逮捕された場合
- 会社が関係する犯罪で逮捕された場合
- 会社が被害者となる犯罪で逮捕された場合
の大きく3つの場合が考えられます。
ここでは、それぞれの場合について、会社にとってどのような影響が考えられるのか、会社としてどのような対応をすべきかについて見ていきましょう。
このページの目次
1 会社とは関係のない犯罪で逮捕された場合
たとえば、役員が家族旅行中に人身事故を起こして被害者を死亡させてしまった場合や、従業員が休日に人を殴って怪我をさせてしまった場合など、完全なプライベートで起こした犯罪や会社業務とは全く関係ない活動中に起こした犯罪が挙げられます。
会社とは関係のない犯罪で逮捕されているので、会社としては何ら影響を受けないとも考えられますが、この場合でも①会社業務への支障と②報道のリスクは考慮しておかなければなりません。
①会社業務への支障
逮捕された場合に身体拘束期間が長くなる可能性があることを考慮しなければなりません。
逮捕されたのが役員である場合はもちろん、従業員だったとしても重要な案件を任せていたり、納期などが迫っており人手が必要であったりする場合には、身体拘束が長期化することによって、会社業務が滞ってしまい、重大な損失が生じてしまう可能性があります。
そのため、会社としても逮捕されている人に弁護士をつけて早期の釈放に向けた活動をしてもらうメリットがあります。
また、たとえば、建設業許可を受けているような会社の場合、役員が禁錮以上の刑に処せられてしまった場合、建設業許可が取り消しになってしまいます。
これは執行猶予であったとしても同様のため、役員が逮捕されてしまった場合には、不起訴や罰金を目指して、弁護士に活動してもらう必要性が高いといえます。
②報道のリスク
逮捕されたとき、起訴されたとき、判決を受けたときには、報道される可能性があります。
報道される内容には、逮捕された人が勤めている会社名まで含まれる可能性があり、特に上場企業や大企業、公的資金が投入されているような会社の場合には、会社名まで報道させる可能性が高いといえます。
会社とは関係のない犯罪であったとしても、報道されてしまうと会社のイメージや信用が大きく失われてしまう可能性があります。
そのため、弁護士を通じて報道されないように関係各所に働きかけたり、報道される前に記者会見を開いたり、逮捕された従業員や役員に対する処分を早期に行ったりすることで、会社に対するダメージを極力抑えることを考える必要があります。
2 会社が関係する犯罪で逮捕された場合
たとえば、贈収賄、脱税、雇用調整助成金詐欺など、会社が組織として関与していたり、会社が主体となって起こしたり、会社にも罰則があったり(両罰規定)するような犯罪が挙げられます。
このような場合、当然会社自体に対しても捜査が入るため、①会社業務への支障はとても大きなものになります。また、②刑罰・行政処分のリスクや③報道のリスクも併せて考えなければなりません。
①会社業務への支障
会社が関係する犯罪の場合、取引履歴や会計帳簿など会社が保管している様々な資料が捜査機関に押収されてしまう可能性があります。
また、逮捕された人だけでなく、逮捕されていない役員・従業員に対する取調べも行われます。
そのため、会社の業務をストップせざるをえなくなったり、取引を一時中止しなければならなくなったりと会社業務に多大な支障が出るだけではなく、信用を大きく失墜してしまう可能性も高いといえます。
②刑罰・行政処分のリスク
会社が関係する犯罪の場合、会社に対しても刑罰が科せられる可能性があります。
会社に科せられる刑罰は罰金刑ですが、非常に高額となる場合が多く、会社財産を大きく減らしてしまうだけではなく、刑罰を受けたことにより上場廃止となったり、営業許可などが取消しになったりしてしまう場合もあります。
また、たとえば脱税事件の場合、刑罰とは別に本来納めるべきであった税額の他にペナルティとしての追徴課税なども支払わなければならなくなるなど、会社の資産状況を大きく悪化させてしまうペナルティを受けてしまう可能性もあります。
さらに、不正をした会社名について行政機関が公表する場合もあり、会社の信用が大きく損なわれてしまいます。
そのため、弁護士に依頼して会社の意思とは関係なく、役員・従業員が独断で行った犯行であるなどの主張立証をしていったり、役員・従業員が行った行為が犯罪に当たらないなどの主張立証をしていくことで、刑罰や行政処分を避ける活動を早期に行っていく必要があります。
③報道のリスク
会社が関係する犯罪の場合、報道されるリスクが非常に高いです。
報道されることを避けることは容易ではありませんので、事前に報道発表や記者会見を開いて会社としての説明責任を果たすことで、企業イメージの悪化を最小限に抑える対策を考えることも必要となります。
3 会社が被害者となる犯罪で逮捕された場合
たとえば、従業員による会社財産の窃盗や業務上横領、役員による特別背任などが挙げられます。
会社が被害者となる犯罪の場合には、捜査が開始されるきっかけとして、会社から捜査機関に対して被害申告することが多いと思われます。
会社から被害申告するにあたっては、従業員等の不正に関する内部調査や証拠収集、告訴状の作成などについて、時間や労力、費用が必要になります。
そして、被害申告が受理されて、従業員等が逮捕された後にも、①捜査や裁判への対応、②損害賠償請求などへの対応、③再発防止対策、④報道・外部発表への対応など様々なことを考える必要があります。
①捜査や裁判への対応
従業員等が逮捕された後でも、捜査機関から被害者として事情聴取を受けたり、証拠資料の提出を求められたりすることがあります。
また、従業員等が否認している場合などでは、刑事裁判への協力を求められる場合もあります。
代理人として弁護士を選任していると、捜査や裁判に対応する窓口として活動してくれるため、会社の労力を最小限に抑えることが可能です。
②損害賠償請求などへの対応
従業員等への損害賠償請求や示談・和解に対する対応などについても考える必要があります。
また、懲戒処分や未払い給与・退職金の支払いについても適切に対応しなければ、のちに問題とされる可能性があります。
弁護士を代理人として選任することで、これらの対応もスムーズになります。
③再発防止対策
なぜ不正が起きてしまったのかという原因を究明し、同じことが起きないようにすることも非常に重要です。
原因の調査、対策の構築はコンプライアンスの基本です。
専門家にアドバイスを受けながら、適切な対策を取っていきましょう。
④報道・外部発表への対応
役員の不正などの場合には、株主総会での説明や報道発表、行政機関などへの通報など、内外に情報を提供する必要が出てくる場合があります。
発表の内容や時期によって、企業イメージに与える影響が大きく変わりますので、専門家と相談しながら対応することが重要です。