公正取引委員会からの聴き取り

公正取引委員会から意見聴取の通知が来るとどうなるのでしょうか。

公正取引委員会とは

公正取引委員会とは、独占禁止法等の違反行為を取り締まることなどを目的として設置されている内閣府に所属する行政機関の一つです。

独占禁止法

独占禁止法は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることを目的とする法律です。

市場の競争原理などのメカニズムが正しく機能していれば、事業者は自らの創意工夫によってより安価で優れた製品を市場に出して売上を伸ばすことができますし、消費者もニーズにあった製品を選ぶことができますが、例えば、価格カルテルといって事業者間で特定の価格を設定したり、価格に上限や下限を設けたりすると、消費者は価格によって商品を選ぶことができなくなるばかりか、安く買えたものが高く買わなければならなくなり、また、価格による自由競争がなくなるため非効率な事業者を温存して経済を停滞させるため独禁法違反として厳しく規制されています。

また、入札談合といって、国や地方公共団体などが発注する公共工事や物品の公共調達に関する入札に当たり、複数の事業者が事前に受注者と受注価格を決めてしまうと、事業者にとって自らの創意工夫による事業活動を妨げ業界全体の発展を停滞させ、より少ない支出で調達ができなくなり納税者である国民に不利益をもたらします。

こうしたことから、価格カルテルや入札談合などは独占禁止法違反として厳しく取り締まられているわけです。

公正取引委員会の業務

公正取引委員会は、一般の方などからの申告のほか、事業者の内部の者からの通報、中小企業庁からの請求などによって調査が開始されます。

この調査はいわゆる行政調査といい、事業者の事務所に公正取引委員会の審査官等の職員が行き、立入検査をしたり、その検査の結果、事件の調査に必要な物の提出を受けたり、関係者を呼び出して供述を聴取したりします。

また、公正取引委員会は、違反行為を行っている事業者に対して、事件調査に必要な情報について報告を求めることができます。

こうした一連の手続を行政調査手続といいますが、これらの調査手続を経て、公取が独禁法違反を認定したときは、それらの違反行為を排除するために必要な措置を取るべきことを内容とする排除措置命令がでたり、課徴金の支払が命じられることがあります。

また、公正取引委員会は、より悪質な事案については、犯則調査を行います。

犯則調査とは

犯則調査とは、独禁法違反事件のうち、公取が刑事告発をする必要があるか否かを調査するために行う調査手続です。調査のために必要があるときは、裁判官の令状を得て、捜索差押え等を行うこともできます。

この公正取引委員会による刑事告発は、犯則事件に関する刑事事件を起訴し刑事裁判として裁判所に係属させるための訴訟条件とされており、この刑事告発を行う権限は公正取引委員会にのみ認められています。つまり、公正取引委員会の刑事告発により初めて検察官は犯則事件を起訴できるのです。

総括

記憶に新しいところでは、令和4年度において、東京オリンピック・パラリンピック関係の入札談合事案や電力小売分野における市場分割カルテルなどがありますが、独占禁止法違反事件は、このような社会の耳目を集めるような事案ばかりではなく、中小企業を含むあらゆる事業者が対象となりえます。

最初は、同業者間の付き合いの軽い気持ちで今後の事業展開について話し合っていただけだったけれども、いつの間にか価格カルテルに加担している結果となり、ある日突然、公正取引委員会から話を聞きたいなどと連絡がくることがあるかも知れません。

そんなとき、弁護士に相談することをためらっていてはいけません。公正取引委員会から聴き取りの連絡が来るということは、調査を受ける側の事業者の関与の度合いも相当程度にいたっており、それらの関与形成の経緯や事実関係などについてもかなりの調べが入っていることが少なくありません。

事と次第によっては、犯則調査が開始され公正取引委員会による告発、そして刑事訴追ということになることもありうるわけです。

こうしたことにならないためにも、早め早めに手をうつということがとても大事になってきます。調査に至る前の不穏な動きを察知した段階でこれを回避するためにはどうするか、仮に犯則調査が始まった場合の強制調査への対応、司法取引による不起訴の獲得など、これらの対応は弁護士でなければできません。

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