民泊サービスを始める場合の法律上の注意点に関し弁護士が解説します⑥

【相談】
不動産事業を営むX社の社長であるAさんから次のような相談を受けました。
実は自社の顧客から「自分が住む一軒家や持っている別荘を利用して民泊サービスを始めようと考えているがどうすればよいのか」と相談されているのだがどのように対応すればよいのか。
最近住宅宿泊事業法という法律が施行されたと聞くがそれは旅館業法とは何が違うのか。
(相談はフィクションです)
前回の記事では上記の相談を基に民泊サービスを始めるための形態として、住宅宿泊事業(民泊とは何か?)という形態があることを解説させていただきました。
また住宅宿泊事業として行う場合には、宿泊させる日数が年間で180日を超えないことが条件になることを説明しました。
今回の記事では、住宅宿泊事業として民泊サービスを始める場合の法律の注意点について、より詳しく解説していきます。
このページの目次
1 住宅宿泊事業の「住宅」とは何か
住宅宿泊事業法(民泊新法)の対象となる民泊施設は旅館・ホテルなどの宿泊施設ではなく、あくまで「住宅」という位置付けです。
詳しくは後述しますがこの定義は非常に重要です。
なぜならば住宅宿泊事業法上の「住宅」にあたらなければ宿泊事業を行うことはできず、最悪の場合無許可営業となってしまうからです。
住宅の定義については、住宅宿泊事業法2条1項に定めがあります。
住宅宿泊事業法第2条1項
この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。
一 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして国土交通省令・厚生労働省令で定める設備が設けられていること。
二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること
この条文では1号で「住宅」の要件として①一定の設備を有していること、②人の居住の用に供されていると認められることの2点を挙げています。
今回の記事では①,②の要件について詳しく解説していきます。
2 「住宅」の要件を満たす設備について
上記の1号に定めがあるのが「住居」に求められる設備について詳しくは住宅宿泊事業法施行規則第1条に規定があります。
住宅宿泊事業法(以下「法」という。)第二条第一項第一号の国土交通省令・厚生労働省令で定める設備は、次に掲げるものとする。
一 台所
二 浴室
三 便所
四 洗面設備
旅館業法の規定と比べて客室の面積や宿泊者数に応じた数だけの洗面設備や便所などは求められておらず、旅館業法によって許可取得を目指す場合に比較して設備についてのハードルはかなり低くなっているといえます。
上記の設備は通常の一軒家やマンションの居住用の部屋であれば十分に満たすでしょう。
ただ事務所用の一室やガレージとして使用している部屋で上記設備がない部屋は「住宅」とは認められません。
3 「人の居住の用に供されている」という要件について
設備については上記解説のように、人が生活するために必要な設備ばかりであり、規模についての要件もないのでこれを満たすハードルは高くありません。
しかし、「人の居住の用に供されている」という要件には別途注意が必要になります。
改めて条文を挙げて説明します。
住宅宿泊事業法2条1項
この法律において「住宅」とは、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する家屋をいう。
(中略)
二 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋その他の家屋であって、人の居住の用に供されていると認められるものとして国土交通省令・厚生労働省令で定めるものに該当すること。
そして、人の居住の用に供されているという要件については、住宅宿泊事業法施行規則第2条に定義規定があり以下のように定められています。
人の居住の用に供されていると認められる家屋として国土交通省令・厚生労働省令で定めるものは、次の各号のいずれかに該当するものであって、事業(人を宿泊させるもの又は人を入居させるものを除く。)の用に供されていないものとする。
一 現に人の生活の本拠として使用されている家屋
二 入居者の募集が行われている家屋
三 随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋
この条文を分かりやすく説明すれば,①1号から3号の各号のいずれかに該当し、②宿泊・居住以外の事業に用いていないことです。
②について、宿泊事業で用いれるのが180日を超えてはならないと言っても、それ以外の日を会社のオフィスに使用している場合には「住宅」の要件を満たさないことになります。
以下では各号の意義について詳しく解説していきます。
現に人の生活の本拠として使用されている家屋
この要件は典型的に言えば誰かが自宅として継続して生活している家屋になります。
短期的に誰かが住んでいるだけというだけではこの要件を満たしません。
入居者の募集が行われている家屋
仮に住居として誰かが利用していなくても、入居するものを募集している一軒家や部屋については「入居者の募集が行われている」として「住宅」の要件を満たす場合があります。
ただし形式的に募集していたとしても、その条件があまりに厳しくおよそ入居者が応募しないだろうというものであれば「募集が行われている」と認定されない場合もあります。
随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋
これは、生活の本拠として使用されていないものの、少なくとも年1回以上は使用しているような家屋を指します。
典型的には【相談】であったような年に数回利用するだけの別荘もこれにあたり、「住宅」の要件を満たす場合があります。
その他にも、相続したばかりで今は利用していないが将来住居と使用することを考えて保有している空き家や、休日のみ利用しているセカンドハウスなどもこれにあたります。
一方で入居実績が全くない、民泊専用の投資用マンションはこの要件を満たしません。民泊として利用することを想定した不動産売買ではこの点に留意しましょう。
この要件は文字通り読めば実際に現在人が住んでいないと駄目なようにも読めますが、それよりは広い解釈になっています。
その一方でこれに該当しないような不動産も当然たくさんあります。
法令の要件を満たしているかは,不動産売買や不動産管理の場面で非常に重要になります。
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