日本版DBSとは

令和6年6月、日本版DBSの法律が成立したことを伝える報道が出ました。
この制度は、教育関係者など児童生徒と関わる仕事と密接に関連します。学校や学習塾の経営者や幹部の方々、学校などの教員を目指している方、性犯罪の前科を有する方には、とても大きな影響を持つ制度が誕生しました。

この日本版DBSとは一体何なのか。どのような仕組みなのか。連載していきます。
本ブログは、令和6年6月24日の情報を元に作成されています。日本版DBSにより現に対応を迫られている方や不利益を被っている方は、この制度に詳しい弊所の弁護士にお問い合わせください。
日本版DBSの根拠法は、「こども性暴力防止法」という法律になる見込みです。

そもそもDBSとは何でしょうか

「日本版」という言葉があるように元々DBSは外国の制度です。

”子どもを守る”「日本版DBS」法案決定https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/106604.html

イギリスには、子供と接する職場で働く人に性犯罪歴がないかどうかを確認する権限がある機関として、前歴開示及び前歴者就業制限機構、通称DBSがあります。
これと同様のシステムを日本でも作ろうというのが日本版DBSです。

日本版DBSのシステムを噛み砕いて説明すると、「子供と関わる一定の職場は、入社しようとする人に性犯罪の前科があるかどうか、確認しなさい」と命じるようなものです。
では、その確認をすべき一定の職場とはどんなものでしょうか。学校や学習塾です。学校は、確認をする義務がありますが、学習塾は任意というように、細かな違いはあります。

性犯罪とは何でしょうか。性犯罪といえば、例えば痴漢やレイプや児童ポルノが典型例です。これは、日本版DBSで確認される性犯罪にあたります。ストーカーや下着泥棒はどうでしょうか。これは対象外です。ストーカーや下着窃盗は、性犯罪に近い要素もあるといえばある気もしますし、性犯罪というほどではないのでないかといえばそのような気もします。このようなものは日本版DBSの対象にならないようです。

性犯罪を犯してしまった人の中には、「自分は成人している相手を性の対象として見ているのであって、児童生徒なんかに欲情しない!なぜ性犯罪前科があるだけで十把一絡げにされるんだ!」と思う方もいるかもしれません。
このブログを作成している頃に、女性保育士が保育園に通う男児の首を切りつけた事件が発生しました。これは性犯罪ではないのですが、まさに子供に直接的な加害行為をしているのですから、児童生徒を性の対象としない人に比べてずっと、子供と切り離す必要が大きいように思われます。

性犯罪という要素だけで十把一絡げに日本版DBSの対象とすることによって、児童生徒に対する危険が低いのに性犯罪前科のためだけに登録される人もいれば、現に子供に重大な加害行為を加えたのに性犯罪でないというだけで登録されない人もいるわけです。この日本版DBSについて、非常に大きな問題があるとの議論があることは間違いないので、今後、その問題を踏まえて制度変更があるかもしれません。
しかし発足当初の状況としては、「児童・生徒みたいな人は自分の性の対象でない」という話は通用しないわけです。

なお、性犯罪に限らず本当は前科があるのに、履歴書に前科があることを書かないなどその前科を隠して入社した場合にどのような問題が生じるかは、別の記事で説明します。

前科とは何か

これは有罪の裁判を受けた記録です。ですから、罰金刑、執行猶予、刑務所で服役といった刑罰を受けたことがある場合には前科にあたります。他方、痴漢で逮捕されたけど冤罪だったとか示談をして起訴猶予になったという場合は、前科にあたりませんから、日本版DBSで確認される情報とは異なることになります。
前科情報はいつまで登録されるのでしょうか。これは刑の重さによって変わっています。罰金刑の前科は執行終了から10年、刑務所など罰金より重たい前科は執行終了や裁判の確定から20年となっています。
 
このように日本版DBSは、一定の事業者が従業員の性犯罪の前科を確認するよう求めるシステムです。事業者だけでなく、就職希望者や現に前科のある人には、大きく関わってくる制度なので、この制度により問題を抱えている方は、弊所の詳しい弁護士までお問い合わせください。

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