建設業法により行政指導を受けた場合の対応①

【事例】
X社はY県から建設業の許可を得て住宅の工事等を行う会社です。
X社では多くの仕事を受注するために下請けに対して、非常に厳しい工期を定めて工事を任せるということを常習的に行っていました。
そのことが内部告発により、Y県の担当者に知れることになり建設業法違反により立ち入り調査が行われました。
立ち入り調査の結果著しく短い工期を強いていたとしてX社は、工期の設定に関し是正するように行政指導を受けました。
突然行政指導を受けたことに驚いたX社のA社長は今後の対応に関してあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に相談しました

1 建設業法違反があった場合の手続について

今回は上記の事例を用いて、建設業法違反により行政指導を受けた場合の対応について解説します。
まずは事例のように建設業法違反が発覚した場合の手続きについて解説します。

①行政指導

行政指導は後述する処分を行う前に、このように是正してくださいというように指導を行うことが一般的です。これを行政指導といいます。
行政指導については書面でされる場合と口頭でされる場合があります。
行政指導自体には強制力はありませんが、これに従わないでいると後述する処分を受ける可能性が高くなります。

②指示処分

指示処分(監督処分と呼ぶこともあります)というのは、法律や条例に照らして違反している、もしくは適切ではない状態を正すために業者がすべきことについて、監督行政庁が自主的な改善を促すことです。
行政指導と異なり指示処分には拘束力があります。
また指示処分が出されると、その情報は処分を行った日から5年間、監督処分簿に登載することになっていて、公開されることになります。

③営業停止処分

指示処分に従わないと、営業停止の処分を受ける可能性があります。
また、独占禁止法、刑法などの法令に違反した場合や、一括下請負禁止規定の違反があった場合などのケースでは、指示処分なしで営業停止処分がなされることもあります。
営業停止期間は、1年以内の範囲で国土交通大臣や都道府県知事などの監督行政庁が決定します。

④建設業の許可の取消

営業停止処分に違反して営業してしまったり、不正な手段を使って建設業の許可を受けたりすると、監督行政庁により建設業の許可の取り消しがなされます。
独占禁止法、刑法などの法令に違反した場合や一括下請負禁止規定の違反があった場合などで、特に情状が重いと判断されれば、指示処分や営業停止処分なしで許可取り消しがなされることもあります。

以上の手続きについては必ずこの順序でされるというわけではありません。
また違反内容によって対象となる手続きも変わってきます。
態様や違反の内容によっては行政指導を経ずに不利益な処分が科されることもあります。
しかしいずれにせよ、行政指導があった場合に適切な対応を取らなければ②以降の厳しい処分が科されることは間違いありません。
したがって行政指導があった段階で早急な対応が求められます。

2 本件で問題となる建設業法違反について

建設業法違反について行政指導受けてそれを放置して違反を継続した場合には行政処分のみならず刑事処分を受ける場合があります。
本件事例で問題になるのは著しく短い工期を禁止する規定(建設業法19条の5)の規定です。
この規定は2020年にされた建設業法の改正で加えられた規定ですので注意が必要です。

建設業法19条の5
注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。
同法19条の6
前条に違反した場合、許可行政庁から勧告または公表されるおそれがある。

そして著しく短い期間かどうかについては、中央建設業審議会が作成した資料(https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000711.html)が参考になるとされています。
事例ではまず、今回問題となっているケースで本当に建設業法違反にあたるのか検討する必要があります。
そして先述の資料を基に検討しあたるとなった場合には早急な対応が必要となるでしょう。
次回の記事では、行政指導があった場合に必要な対応について解説させていただきます。

建築業法などの規定による「行政指示/処分」についてお困りのことがある方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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