取締役等に対する贈賄罪、収賄罪で自社の取締役が金銭を受け取っていた際の対応を弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
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【事例】
A社の取締役であるXさんは、下請け業者のB社のYさんから、自分を優遇してもらうことをお願いされて100万円の金銭を受け取りました。
そしてXさんはYさんが自宅を購入するための資金に困った際に、A社名義でYさんにとって非常に有利な条件で多額の融資をしていました。
以前の記事では取締役が職務に関し金銭を受け取った場合に成立する罪や、成立する要件について解説しました。
今回の記事では、事例のようなケースが発覚した場合の対応について解説します。
1 事実の調査について
事例のようなケースが発覚するのは、事情を知った者からの内部または外部通報によることが多いと思われます。
そのような通報があった場合はまずは当事者に事情を確認して、事実関係を詳細にかつ正確に把握することが重要になります。
以前の記事で解説したように、会社役員の収賄罪については、公務員の収賄罪とは要件が一部異なります。
受け取った金銭が何か職務上の請託を受けてされたものなのか、受け取った利益に関する証拠があるのかなど、当事者の証言や客観的証拠を踏まえて会社法に違反するような事実があるのかについて確認をする必要があります。
会社法に違反するのは以前の記事で説明した収賄だけではありません。
本件事例においては、Yさんに対してXさんが不正な融資を行ったことについて特別背任にあたる可能性があります。
特別背任については会社法960条に規定があります。
会社法第960条
次に掲げる者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は株式会社に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、当該株式会社に財産上の損害を加えたときは、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 発起人
二 設立時取締役又は設立時監査役
三 取締役、会計参与、監査役又は執行役
四 民事保全法第56条に規定する仮処分命令により選任された取締役、監査役又は執行役の職務を代行する者
五 第346条第2項、第351条第2項又は第401条第3項(第403条第3項及び第420条第3項において準用する場合を含む。)の規定により選任された一時取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役)、会計参与、監査役、代表取締役、委員(指名委員会、監査委員会又は報酬委員会の委員をいう。)、執行役又は代表執行役の職務を行うべき者
六 支配人
七 事業に関するある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人
八 検査役
明らかに会社の損害にあたるような不正融資(例:返済原資のないものへの無担保での貸し付け)については、事前に金銭の収受などがなくとも特別背任にあたり刑事責任を負う可能性があります。
収賄という形で通報があったとしても、特別背任などほかの罪に当たる可能性はないかなど多角的な視点で調査することが重要になります。
そのような調査を行うためには、法的知識に詳しいものも含めた調査チームを作ることが重要になります。
2 当事者への責任追及
仮に会社法違反であることが明らかになった場合には当事者に対しての責任追及について考える必要があります。
収賄や特別背任については刑罰が予定されているので警察に届け出ることが適当かとは思いますが問題は単純ではありません。
事件の内容的に会社の評判や株主の利益にも関わる事態なのでどのように対処するかは様々な視点から考える必要があります。
会社法にも会社から取締役への責任追及(例:取締役の解任請求)や、株主から取締役への責任追及(例:損害賠償請求)など様々な規定が置かれていますので会社としても当該事例にや会社の置かれている状況などに応じて適切な対処をする必要があります。
対処方法の選択や対処の進め方についても専門家である弁護士に相談しながら進めることをおすすめします
3 再発防止策の策定
事件の処理が終了したとしても、今後事例のような事態が発生しないように再発防止策を策定することは、会社の信頼回復や今後の会社経営において重要な課題になります。
内部通報制度の充実や、取締役等の会社役員のコンプライアンス体制の確立などを検討する必要があります。
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