社内調査におけるヒヤリングの留意点について④

社内調査におけるヒヤリングの留意点について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

そもそも社内調査とは何か

社内調査とは、一般に、企業内で業務に関し、社員による違法行為や不適切な行為(以下、まとめて「不正行為」と呼びます。)が行われた場合、あるいはその疑いが生じた場合に、企業が主催者となって実施する調査のことをいいます。

社内調査におけるヒヤリングの意味

社内調査のためには、事案に関連する資料を当該部署から収集し、確認をするほか、最も重要なものとして、社員に対するヒヤリングの実施があります。

企業で不正行為が行われ、またその疑いがある場合に、事実関係を解明するため、事情を知っている関係者のヒヤリングを実施することは必要不可欠です。

今回は、社内調査におけるヒヤリングの留意点の最後として、企業が、社内調査として社員に対するヒヤリングを行った場合に、それをどうやって証拠化するかについて解説します。

以前の記事:社内調査におけるヒヤリングの留意点③

ヒヤリング結果の証拠化について

社内調査は、証拠の収集活動であり、収集した証拠は、将来の民事・刑事の手続きに使用される可能性もあります。そこで、何らかの形で収集した証拠は、証拠資料として文書化し、整理しておくことが重要です。

社内調査でヒヤリングを行った場合には、そのヒヤリング結果を正確に証拠とする必要があります。ヒヤリング結果を証拠化する方法には、①ヒヤリングを実施した者がヒヤリング記録を作成する、②ヒヤリングを録音しておき、その反訳文(録音内容を文書化したものです。)を作成する、③陳述書を作成してヒヤリング対象者の署名を得る、などの方法があります。

①の方法が最も一般的な方法だと思われます。
②の方法は、短時間で簡潔なヒヤリングを実施した場合には、後日、言った、言わないという紛争を回避する観点からも有効な方法ですが、ヒヤリングが長時間に及び、社内調査とは無関係の会話が多数含まれるような場合は、使いにくい証拠となってしまいますので、注意が必要です。この場合、事前に録音することを対象者に伝えることが望ましいですが、録音を伝えることで、供述を引き出さない場合もあるため、事前に録音することを伝えるか否かは個別に判断する必要があります。なお、対象者の方から録音を申し出てくることもあり、情報漏洩防止の観点から録音を禁止にしても問題はありません。もっとも、これを拒むことで後にヒヤリング自体の透明性、信用性を問題とされる可能性があることは注意しておく必要があります。
③の方法は、ヒヤリングの結果を将来の民事・刑事の手続に実際に使用する必要があるときには有効な方法です。陳述書とは、対象者が自身の名義で作成した文書で、通常、作成者本人がこれに署名や押印を行うものであり、対象者が記載内容に間違いがないことを確認してから署名をおこなうため、対象者が説明した内容と異なる内容が企業へ報告されるリスクは少ないからです。もっとも、陳述書の内容が、客観的な関係資料と整合していなかったりした場合には、その社員の陳述書の証拠としての利用価値は少なく、常に陳述書を作成するまでの必要はありません。

最後に

社内調査をする際には、人証(関係者へのヒアリングなど)と物証(事案に関連する資料)の両方を調べることが必要となり、必要に応じて外部の専門家を利用することも考えられます。

事実を明らかにするためには、どれだけ証拠を集められるかが重要です。調査に慣れている弁護士に依頼して、社内の担当者と一緒に進めていくのがベストといえるでしょう。

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