官製談合で社員に対して捜査を受けた時,社員が官製談合に関わらないために

【事例】
A社は滋賀県草津市で建設業を営んでいる会社でした。
A社の社員であるBは自身の営業成績を上げようと、プライベートで親交のある滋賀県の職員であるCに対して金銭を渡すことで入札における予定価格を教えてもらっていました。
Bは予定価格を聞いていたことはA社には伏せた上で自身の担当する工事において、Cからの情報を基に予定価格に近接した額で繰り返し入札を行っていました
その結果としてA社はBが担当する工事において立て続けに落札に成功していました。
しかし、落札金額が予定価格と不自然に近接していることから怪しんだ滋賀県警の警察官がBに対して取調べを開始しました。
逮捕されて会社に迷惑をかけるのではと考えたBはA社の社長に対し、これまでの犯行を告白しました。
(事例はフィクションです)

官製談合とは

官製談合とは国や地方自治体などによる事業の発注の際に行われる競争入札において、発注機関側の公務員が入札談合(入札参加者の間で、あらかじめ受注予定者や受注価格等を取り決めるなどすること)に関与して、不公平な形で落札業者が決まるしくみを指します。
具体的な態様として度々問題になるのは、本件の事例のように当該工事における予定価格を漏洩する場合です。
予定価格とは入札が行われる場合に、入札時に地方公共団体側で事前に定められる価格で、この価額を下回らない額のうち最低額を提示した業者が落札することになるので入札において極めて重要な情報になります。

官製談合については2003年に入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律(以下通称である「官製談合防止法」といいます)が制定されました。
談合に関わった公務員については官製談合防止法違反で刑事訴追される可能性が高いです。
これに対して、談合に関わった社員等の公務員ではない関係者については、刑法上の公契約等妨害罪(刑法96条の6第2項)に問われる可能性が高いです。
このように自社の社員が官製談合に関わってしまった場合には、刑事事件の被疑者として取り扱われます。
事例のように金品を受け取っていた場合には、贈賄罪(刑法198条)に問われる可能性があります
そして関係者が複数いて当事者間での口裏合わせの危険性が高いことから、官製談合に関する刑事事件は非常に身体拘束のリスクが高い類型の事件になります。

官製談合防止法違反については,こちらで解説しています。

官製談合に社員が関わっていた場合に会社が受ける影響について

①捜査による影響

自社の社員が官製談合に関わっていた場合にはほぼ確実に会社に対して捜査機関の捜索が行われて、工事に関する資料等の関係書類等が広範かつ大量に押収されるおそれがあります。
当然ですが当該社員から証拠隠滅を依頼されても決して応じてはいけません。会社ぐるみでの関与を疑われることになりますし、別途証拠隠滅罪で刑事訴追を受けるおそれもあります。
当該社員が隠れて証拠書類を隠滅しないようにすることも含めて対応する必要があります。
当該社員については先述したように逮捕されて、身体拘束を受ける可能性が高いです。
社員が捜査を受けていることが明らかになった場合には、以上のような捜査の流れに留意して今後の業務体制について見直す必要があります。

②今後の入札における影響

社員による官製談合行為が明らかになったケースの多くでは、当該地方公共団体における工事に関して会社として指名停止処分を受けることになります。
指名停止処分を受ければ、入札による受注機会を失うのみならず、指名停止となった事実と理由が公表されるので会社の信頼が大きく揺らぐことになります。
このように官製談合に社員が関わっていた場合に会社が受ける損失や影響は測り知れないものものですので、普段から会社におけるコンプライアンス教育の徹底と法令が遵守されているかのチェック体制の確立が重要になって来るといえます。

官製談合事件に社員が関与していた場合の事後対応

官製談合は会社に対する周囲からの信頼を失墜させる犯罪であり、入札停止などの重大なペナルティを科される事件になります。
信頼回復のために重要なのは再発防止のための対策になります。
具体的には入札が関係する契約で複数人で対応する体制づくりや、内部通報システムの整備などが有効であると言われています。
あいち刑事事件総合法律事務所には長年刑事事件を中心に扱ってきたことによる刑事事件に対するノウハウと、企業のコンプライアンスに関する専門チームがあります。
是非再発防止や事件に対する者としての対応にお困りの経営者の方はご相談ください。

お問い合わせはこちらから,またはお電話(0120-631-881)までどうぞ。

keyboard_arrow_up

0359890893 問い合わせバナー 無料相談・初回接見の流れ