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はじめに
近年、建設業法違反が発覚して元請企業が営業停止処分や指名停止措置を受ける深刻な事例が相次いでいます。
例えば、2025年1月にはパナソニックグループの16社が資格要件を満たさない技術者を現場に配置していたとして22日間の営業停止命令等の処分を受けたことを公表しました。
このニュースは、大企業にも法違反への厳正な措置が取られたということで業界に衝撃が走りました。
また談合など不正行為が発覚すれば罰金だけでなく営業停止や自治体からの指名停止といった厳しい制裁が科され、企業は経済的損失と社会的信用の喪失という二重の損失を被ります。その損失を回復させるのは容易なものではありません。
本記事では中小建設会社の経営者や法務担当者向けに、建設業法の基本や主な違反類型、行政処分の内容と企業への影響、違反発覚の経緯、再発防止策等について、近年の報道事例を踏まえて、あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士が法的観点からわかりやすく解説します。
建設業法について
建設業法は建設業を営む者の資質向上と建設工事の適正な施工を確保する目的で制定された法律です。
建設業法においては、許可制により国土交通大臣または都道府県知事の許可がなければ一定規模以上の建設業を営めないことと定めています。
また許可を受けるためには、営業所ごとに資格と経験を持つ専任技術者を配置することや、一定の財産的基礎を有すること等の要件を満たす必要があります。
建設業法においては、工事請負契約の適正化も重視され、契約書面の交付義務や下請取引のルールなどが定められており、法規制によって発注者(施主)の保護と建設業の健全な発展が図られています。
代表的な違反類型について
次にしばしばみられる建設業法違反の違反類型について説明します。
(1)無許可営業:建設業の許可を受けずに一定金額以上の工事を請け負う行為
無許可で500万円超の工事を請け負った場合には営業停止処分や許可取消といった行政処分を受けることがあります。
また、悪質性が高い場合には刑事事件になる場合があります。なお無許可で500万円超の工事を請け負うことには「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」という刑事罰が定められています。
(2)一括下請負:請け負った工事の全部を他業者に丸投げする行為
一括下請負は建設業法第22条により禁止されています。違反すると少なくとも15日以上の営業停止処分に処せられることになります(ただし、違反の態様や悪質性の程度によって処分が加減される場合もあります)。
発注者の信頼を損ね施工責任も不明確になりこれを防止することが、一括下請負が建設業法において禁止されている趣旨になります。
(3)契約書の作成・交付義務違反:工事請負契約を適正に締結・履行しない行為
建設業法第19条では工事請負契約書の作成・交付が義務付けられており、契約書を作成しない業者は違法とされています。
当然ですが作成のみ行い、相手方に交付しないことも違法になります。
(4)虚偽書類の提出:建設業許可の申請書類等に虚偽の記載をして提出する行為
虚偽申請をした場合には6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金刑が定められています。
虚偽申告が発覚した事例の多くは(1)の許可の要件を満たさない場合に、それを満たしているように見せかけるために虚偽申告をしている例が少なくありません。
このことが発覚した場合には単なる無許可営業の場合より、態様が悪質として刑事告訴されるなど重い処分を科されることが見込まれます。要件を満たさない場合にも虚偽申告は絶対にしないようにしてください。
行政処分の内容と企業への影響
建設業法違反に対する行政処分には「指示処分」「営業停止処分」「許可取消処分」があり、どの処分を科すかは監督処分を決定するための基準に基づいて、不正行為などの内容や程度、社会的影響、情状などを総合的に判断して決定されます。
以下、それぞれの処分について個別に解説します。
①指示処分
指示処分は業務改善命令と言われる場合もあります。
建設業法違反の事実が発覚した場合に、建設業法違反や不適切な事実を是正するために、監督行政庁が建設業者に対して具体的に取るべき措置を命令するものです。
なお指示処分の内容には拘束力がある点で、是正勧告等の勧告と異なっています。
②営業停止処分
営業停止処分は、一定期間、建設業に関する営業活動を禁止するもので、その期間中は新規契約や工事施工ができなくなるものです。
営業停止処分を受けた場合には、取引先からの受注が途絶えるだけでなく社内の作業も停止せざるを得ず、売上の減少や従業員の有給化など経営に大打撃を与えます。
③許可取消処分
許可取消処分は、建設業法に基づく許可を取り消す処分をいいます。許可取り消し処分を受ければ再度許可を取得しなければ許可に基づいて行ってきていた工事を行うことができません。
仮に許可取り消し処分を無視して工事を継続すれば無許可営業となり悪質とみなされて、刑事手続きに移行するおそれもあります。
また行政処分とは別に、指名停止措置が取られる場合もあります。
指名停止措置とは公共工事の発注者である官公庁や自治体が、違反を起こした建設業者を一定期間入札に参加させないようにする措置です。
そのような措置が取られれば、特定の発注者から締め出されることで公共事業への参入機会を失い、企業にとって大きな収益減と信用失墜に繋がります。
いずれの処分措置も公告や報道で外部に知れ渡るため企業イメージを損ない、元請として下請業者や発注者からの信頼回復にも長い時間を要し、企業経営に与える悪影響は測り知れないものといえます。
実際の処分事例の紹介
それでは実際に行政処分や措置を受けた事例について、事案の概要等を紹介します。
まずは、前回の記事の冒頭でも紹介したパナソニックのグループ会社の事例です。
この事例での違反内容は、建設業法に違反して資格の要件を満たさない者を主任技術者・監理技術者・専任技術者として設置していたというものでした。
処分内容としては指示処分に加えて、22日間の営業停止処分を受けています。
関西電力系列の関電コミュニティ株式会社では、無許可の業種で高額工事を請け負った無許可営業、主任技術者の不設置、一括下請負の違反が発覚し処分を受けました。
処分内容としては24日間の営業停止処分を受けています。
埼玉県の協栄クラフト(有限会社)では、専任技術者が退職して許可要件を満たさなくなったにもかかわらず一定額を超える土工工事を複数受注していたため無許可営業とみなされ行政処分を受けました。
処分内容としては埼玉県知事より3日間の営業停止処分を受けています。同時に県のホームページで処分を受けた事実が公表されています。
これらの事例からも、元請企業であっても違反行為が発覚すれば厳しい行政処分や公共工事の受注停止措置が下されるリスクが現実にあることがわかります。
一度処分を受け公表されてしまえば、その後の影響に与える影響は取り返しのつかないものになります。
建設業法に関して不安な方、継続的なアドバイスを希望される方は、建設業法に精通したあいち刑事事件総合法律事務所の弁護士に是非一度ご相談ください。
建設業法違反が発覚するきっかけ
建設業法違反は社内で隠していても様々な契機で露見します。
典型的なのは内部通報や関係者からの告発により行政当局に情報提供されるケースで、実際に国土交通省の法令遵守推進本部には年間千件超の苦情が寄せられ違反疑いの調査に繋がっています。
また官公庁による定期または抜き打ちの立入検査や監督職員の現場調査によって発覚することも多く、令和3年度には全国で778件もの立入検査が実施されており、実施件数は前年の約1.9倍に増加しました。
このように建設業法違反の事実は、周囲や官公庁から厳しく監視されているということを自覚し法令順守に努めることが非常に重要になります。
弁護士が支援する再発防止策について
これまでは建設業法違反になる事例の解説を通じていかにして建設業法に違反しないように経営する対策について解説してきました。
それでは建設業法に違反してしまい、その事実が明らかになった場合には弁護士はどのような対応をすることができるのでしょうか。
以下で弁護士が支援できる再発防止策について具体的に解説します。
①社内コンプライアンス体制の整備
違反が発覚した企業は再発防止のため内部体制を抜本的に見直す必要があります、
まず法令遵守の推進責任者を置き社内コンプライアンス体制を整備することが重要で、国土交通省のガイドライン等を参照しながら社内規程やチェックリストを整え違法行為を防ぐ仕組みを構築します。
②社員や関係者に対する教育や研修
従業員や協力会社への教育研修も不可欠で、建設業法の基礎知識や談合防止など実務上の留意点を周知徹底し、違反行為の兆候を見逃さない企業風土を醸成します。
③内部通報システムの整備
内部通報制度(公益通報制度)を整備して従業員が違反を早期に報告できる窓口を設け、契約書式や下請契約条件のリーガルチェック体制も強化することで、弁護士と連携しながら違反リスクを事前に排除することができます。
さいごに
あいち刑事事件総合法律事務所の弁護士はこのような再発防止策の策定や実施において企業をサポートしてきた実績があります。
違反発生後の行政対応だけでなく予防法務の段階から専門的助言を受けることが肝要です。
当事務所は企業の刑事事件や不祥事案件に強みを持ち、法的問題の予防策・解決策を専門チームでご提案する法律事務所です。
元裁判官や元検察官、会計検査院出身者などを含む経験豊富な弁護士陣が在籍し、企業不祥事への対応経験と専門知識を生かしたリーガルサービスを提供しています。
全国主要都市に12の支部を展開しており本社と支店の両方に迅速な対応が可能で、違反発覚時の緊急対応から平時のコンプライアンス体制構築まで全国規模でサポートいたします。
さらに刑事事件化する事態にも備え豊富な刑事弁護実績を有しているため、建設業法違反に関連して万が一逮捕者が出るような局面でも継続して適切な弁護活動を提供できる点が当事務所の強みです、
建設業における許可や契約違反についてお悩みの際は、予防段階から危機対応まで実績のある弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
