労働局・労基署から連絡があった

労働局や労基署から連絡が来た場合はどうすればいいでしょうか。

全ての都道府県には労働基準監督署が設置されています。各労働基準監督署には、労働基準監督官がいます。

労働基準監督官について

労働基準監督官には、行政機関として労働基準法違反を取り締まるために、事業者の事業場を臨検をしたり、帳簿や書類の提出を求め、必要な尋問を行う行政目的の調査権限があります(労働基準法101条1項、120条)。

また、意外と知られていませんが、労働基準監督官は、労働基準法違反や労働災害事故などについて、刑事事件として捜査をする警察官(法律上は特別司法警察員といいます)としての顔をもっています(労働基準法102条、刑事訴訟法190条)。

つまり、労働基準監督官には、労働法令に関する刑事事件について、一般の犯罪に関して警察官がもっている捜査権限、任意の事情聴取や取調べはもちろんのこと、会社や自宅等の捜索差押えや被疑者を逮捕するといった強制捜査の権限が認められているわけです。

捜査が開始されるまでの流れ

労働基準監督官は、労働関係法令の違反があったとしても、必ずしも直ちに使用者の刑事責任を追及するための捜査を開始するわけではありません。

まずは、行政指導等により、使用者に対して労働関係法令に沿うように是正を促します。使用者がそれに応じて是正をし、労働基準監督官においてそれを確認できれば、事件はそれで終結します。

しかし、使用者が行政指導等に従わず、労働関係法令に違反した状態を何らの是正もすることなく放置していた場合、労働基準監督官としては、もはや看過することはできない状況となり、刑事事件として捜査が開始されることになります。

また、労働者からの内部告発や取引先等からの通報があった場合なども労働事件として捜査が開始される場合があります。そのほか、労災事故により労働者が死亡したり、重傷害を負った場合なども捜査が開始されることがあります。

労働基準監督官の捜査とは

労働基準監督官の実際の捜査は、例えば、賃金不払い等の事案では、賃金台帳、労働時間に関する記録、賃金支払い状況を示す関係書類、労働者名簿などの提出が求められるほか、代表者や給与支払担当者などの取調べが行われたりします。

捜査に必要な書類について、企業側で任意の提出に応じない場合には、会社事務室や代表者の自宅など関係先について、裁判官の発した臨検捜索差押許可状により強制的に捜索差押えなどがされる場合もあります。

また、労働災害事故が発生し労働者が死亡したり重傷害を負った場合には、警察が業務上過失致死傷事件として捜査するのと同時並行で、労働基準監督官は、労働安全衛生法違反などの事件として捜査を開始し、捜査に必要な書類について、任意提出を求めるとともに、関係者から事情聴取をしたり、事故現場の状況を明らかにするための実況見分などの捜査をします。

いずれの場合も、業務を統括する代表者や業務を管理する責任者は被疑者の立場として、その他の関係者は参考人として、それぞれ呼出しを受けて、取調べを受けるなどします。

そのような場合、労基署等から呼出しがあるわけですが、そうした呼出しがあったときは、その後の取調べ等にどのように対応したらよいか、さぞや対応に困惑されることと思います。

労働基準監督官といえど、労働事件で捜査をしているときは、司法警察員としてさまざまな手法で取調べを行います。

他方で、労基署等から呼出しを受け、不安を抱え困惑した状態で、何も知らないうちに誘導されて不利益な調書が作られてしまうこともありえます。

一方で、臨検を拒んだり、虚偽の記載をした帳簿書類を提出したり、従業員に虚偽の供述をさせるなどするなどして調査を妨害した場合、実際に行った者だけでなく会社も罰金を科されます(労働基準法120条4号・121条1項2項)ので、注意する必要があります。

労基署等の呼出しや取調べにどのように対応したらよいか、仮に、臨検捜索差押えなどの強制捜査となった場合にどうすればよいかなど、適切に対応するためには弁護士の関与が不可欠です。

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