各種業法違反

1 はじめに

専門性のある事業を行う場合、各種の法律によって規制を受けることになります。

それぞれの法律では、その専門性のある事業を行うための許可などを受けるための条件も定められていますし、その専門性のある事業を行うにあたって守らなければならないルールも定められています。

そして、そのルールに違反した場合には、様々なペナルティを受けることになりますが、場合によっては、ルール違反が犯罪として規定されており、刑罰を受ける可能性もあります。

ここでは、宅地建物取引業法を例に見ていきます。

2 ペナルティの種類

⑴ 監督処分

専門性のある事業を行う事業を規制している各種の法律では、違反があった場合、所定の国務大臣や都道府県知事などが、その事業を停止させる処分ができたり、許可などを取り消したりすることができます。

例えば、宅地建物取引業法においては、名義貸し(「自己の名義をもつて、他人に宅地建物取引業を営ませ」ること。)が禁止されています(宅地建物取引業法13条1項)。

このような違反があった場合、「国土交通大臣又は都道府県知事は、」その「宅地建物取引業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができ」ます(宅地建物取引業法65条2項2号)。

それだけではなく、その違反の「情状が特に重いとき」は、その宅地建物取引業者の「免許を取り消さなければならない」ともされています(宅地建物取引業法66条1項9号)。

⑵ 罰則

上記⑴で記載した監督処分は、いわばその専門性のある事業を行うにあたって被るペナルティです。

それとは似て非なるものとして、違反があった場合に罰則、つまり刑罰を受ける可能性もあります。

具体的には、懲役(判決によって決められた期間、刑事施設に収容するという刑罰)や、罰金(判決によって決められた金額を国に納める刑罰)といったものです。

例えば、宅地建物取引業法においては、名義貸し(宅地建物取引業法13条1項)の規定に違反して他人に宅地建物取引業を営ませてしまった場合、「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金」、またはその両方の刑罰が定められています(宅地建物取引業法79条3号)。

つまり、上記⑴の監督処分だけでなく、刑罰も受ける(つまり、前科がつく。)可能性があるのです。

また、このような刑罰は、法律で禁止されている行為をした個人だけではなく、法人にも科される可能性があります。

例えば、先ほどの宅地建物取引業の名義貸しの場合、名義貸し行為をした個人(法人の代表者に限らず、「法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者」も含みます。)が、「その法人又は人の業務に関し」て行った場合、その法人に対しても、「一億円以下の罰金刑」が科される可能性があります(宅地建物取引業法84条1号)。

⑶ 過料

上記⑵の罰金と異なり、過料がペナルティとして定められていることもあります。

過料は、専門性のある事業を規制している法律に違反した場合に、お金を国などに支払うという点では罰金と共通していますが、大きな違いがあります。

それは、刑罰ではなく、あくまで行政上の秩序の維持のために違反者に制裁として金銭的負担を課すものに過ぎないという点です。

そのため、過料を支払うことになったとしても、前科とはなりません。

3 最後に

以上のとおり、専門性のある事業を行う場合、各種の法律の規制を受けることになり、違反すると様々なペナルティを受ける可能性があります。

その中には、前科となってしまう刑罰がペナルティとなっている場合もありますし、行為者だけではなく、会社も処罰される可能性もあります。

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