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1 はじめに
経済活動と切っても切り離せないのが税金です。ご存じのとおり、税金には法人税、所得税、消費税など様々な種類があります。
それぞれの税金について、脱税(偽りその他不正の行為によって税金の納付を免れ、または還付を受けること)は犯罪となりますし、脱税となるか否かに関わらず、決められた額の納税をしなければ重加算税などの負担もしなければならなくなりかねません。
それでは、それぞれの税について、どのような罰則が定められているのかを見ていきましょう。
2 法人税
⑴ ほ脱犯
「偽りその他不正の行為により、」「法人税の額につき法人税を免れ、又は」「法人税の還付を受けた場合」、「法人の代表者代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金」、またはその両方が科されます(法人税法159条1項)。
⑵ 故意の申告書不提出ほ脱犯
⑴のように「偽りその他不正の行為」によらずに、故意に、確定申告書等を「その提出期限までに提出しないことにより」、「法人税を免れた場合」、「法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金」またはその両方が科されます(法人税法159条3項)。
⑶ 単純無申告犯
「正当な理由がなくて」、確定申告書等を「その提出期限までに提出しなかつた場合」、「法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者でその違反行為をした者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に処されます(法人税法160条)。
⑵との違いは、故意がなくても成立する点です。
⑷ 両罰規定
また、⑴から⑶のいずれについても、ほ脱をした行為者だけでなく、法人も罰金刑に処される可能性もあります(法人税法163条1項)。
3 所得税法
⑴ ほ脱犯
「偽りその他不正の行為により、」「所得税の額につき所得税を免れ、又は」「所得税の還付を受けた者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金」、またはその両方が科されます(所得税法238条1項)。
⑵ 故意の申告書不提出ほ脱犯
⑴のように「偽りその他不正の行為」によらずに、故意に、確定申告書等を「その提出期限までに提出しないことにより」、「所得税の額につき所得税を免れた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金」またはその両方が科されます(所得税法238条3項)。
⑶ 単純無申告犯
「正当な理由がなくて」、確定申告書等を「その提出期限までに提出しなかつた者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に処されます(所得税法241条)。
⑵との違いは、故意がなくても成立する点です。
⑷ 不納付犯
雇用主は、従業員等の給料などから源泉徴収した所得税を税務署に納める必要があります。
この源泉徴収した所得税を納付しなかった場合、「十年以下の懲役若しくは二百万円以下の罰金」またはその両方が科されます(所得税法240条1項)。
⑸ 両罰規定
また、⑴から⑷のいずれについても、ほ脱等をした行為者だけでなく、法人も罰金刑に処される可能性もあります(所得税法243条1項)。
4 その他の税法違反
⑴ 消費税法
例えば、「偽りその他不正の行為により、消費税を免れ、又は保税地域から引き取られる課税貨物に対する消費税を免れようとした者」や「偽りその他不正の行為により」「還付を受けた者」は、「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金」またはその両方が科されます(消費税法64条1項)。
このように、消費税についても罰則が定められています。
⑵ 関税法
関税法では、輸出入してはならないものを輸出入する行為に対して罰則が定められています(関税法108条の4第1項、109条1項等)。
それ以外にも、例えば「偽りその他不正の行為により関税を免れ、又は関税の払戻しを受けた者」や「関税を納付すべき貨物について偽りその他不正の行為により関税を納付しないで輸入した者」は、「十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金」またはその両方が科されます(関税法110条1項)。
このように、関税についても罰則が定められています。
⑶ その他
その他にも様々な税金が定められています。
5 追徴・重加算税等
⑴ 過少申告加算税
「期限内申告書が提出された場合において、修正申告書の提出又は更正があつたときは、当該納税者に対し、その修正申告又は更正に基づき」、過少申告加算税が課されます(国税通則法65条)。
⑵ 無申告加算税
「期限後申告書の提出」があった場合、納税申告書の提出がなく、税務署長が調査によって税額等を決定した場合(国税通則法25条)、この2ついずれかの後に「修正申告書の提出又は更正があつた場合」のいずれかに該当すると、無申告加算税が課されます(国税通則法66条)。
もっとも、「期限内申告書の提出がなかつたことについて正当な理由があると認められる場合」は別です。
⑶ 不納付加算税
「源泉徴収等による国税がその法定納期限までに完納されなかつた場合」には、不納付加算税が課されます(国税通則法67条)。
もっとも、「法定納期限までに納付しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合」は別です。
⑷ 重加算税
「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき」、納税申告書を提出したり(上記⑴)、法定申告期限までに納税申告書を提出せず、又は法定申告期限後に納税申告書を提出したり(上記⑵)、源泉徴収等による国税をその法定納期限までに納付しなかったりした場合(上記⑶)、上記⑴から⑶に代えて、重加算税が課されることがあります(国税通則法68条)。
6 最後に
以上のとおり、経済活動に必然的に関わる税金ですが、きちんと納めなければ、加算税が課されたり、犯罪に当たってしまったりする可能性があります。